今や自動車はICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)とは切っても切れない関係になっている。自動車のICT化に関しては大きくいうと2つの要素がある。1つは自動車のインターネット常時接続化(そしてそれに合わせた回路や配線のデジタル化)であり、もう1つは自動運転やADASに代表される自動化機能の搭載だ。
自動車のインターネット常時接続化は、英語でいうとConnected(コネクテッド)という言葉で表現される動きで、自動車がLTEや5Gなどの携帯電話回線を経由してインターネットに接続され、クラウド(インターネット上にあるサーバーのこと)と接続され、常時何らかのデータがアップロードされたり、ダウンロードされたりするようになる。
読者の身近で分かりやすい例でいうと、地図データのクラウド化はその最たる進化の1つだ。従来の地図データは自動車のカーナビのストレージに格納されており、データはUSBメモリなどからのアップデートを行なわない限りは更新されないため、開通後の道路データが入っていなくて遠回りを指示されるなどの不便が少なくなかった。
それに対して、スマートフォンなどで一般的なGoogle Mapsなどはクラウド型の地図で、地図データはクラウドに保存されており、その地図データは日々最新に更新されている。端末は必要に応じて現在地周辺の地図データをダウンロードしながら動作するので、ユーザーは常に最新の地図データを使って経路検索が可能で、最短距離で目的地に到達することが可能だ。自動車のカーナビの地図も徐々にこうしたローカルにデータを保存する形からクラウドにデータを置く形への移行が始まっており、Apple CarPlayやAndroid Autoなどスマホをセンターコンソールのディスプレーに接続してナビとして利用する形はこのクラウド型になる。今後はそうしたスマホのようなクラウドベースのさまざまなサービスが自動車にも適用されるになり、自動車がより便利になると考えられている。
そして、現在自動車業界で進行しているのが自動化機能への対応だ。レベル3やレベル4といった本格的な自動運転だけでなく、レベル2やレベル2+に関しても、AIを利用した画像認識などの手法が一般的に使われるようになりつつある。そうしたAIをよりよくしていくためには学習(Training)と呼ばれる作業が必要で、開発時に実際道路を走らせた車両から画像をサーバーにアップロードし、それを利用して学習を行なう。
今後自動車メーカーがそうしたクラウドベースのコネクテッドな各種のサービスや、自動運転のための学習には膨大な演算性能が必要で、自動車メーカーはそれを行なうために専用のデータセンター(多くの数のサーバーを集めた演算専用の施設のこと)を自前で建設したりしてきた。