米国で開催中のCES 2022に合わせて、大手PCメーカーのレノボが、高級ビジネス向けノートPCであるThinkPad X1系3モデルの2022年版を発表しました。
昨今はシリーズが非常に増えたThinkPad X1シリーズですが、今回の世代交代対象となったのは、『ThinkPad X1 Carbon Gen 10』『ThinkPad X1 Yoga Gen 7』『ThinkPad X1 Nano Gen 2』の3モデルです(上写真では手前にある3機種。左からX1 Yoga、X1 Carbon、X1 Nanoとなります)。
米国での発売予定時期と価格は、X1 Carbonが2022年3月で1639ドルから。X1 Yogaは2022年3月で1749ドルから、X1 Nanoは2022年4月で1659ドルからです。
なお、気になるアップデート度合いに関しては、今回は「基本的には中身のみ」というレベルでの更新。
これは3モデルとも、現行世代で画面アスペクト比が16:10となるなど、筐体(外装)レベルでの更新が入ったばかり(Nanoは現行機が初代ですが)なので。そのため外観は“ほぼ”現行と同じです(今回はこのほぼ、がポイント。後述します)。
また今世代では、CPUなどの速度アップが大きいため、更新度合いとしては小さくありません。
それぞれのキャラ付けは、現行モデルとほぼ同じ。14インチで1.09kgのバランス型となるCarbonに、ペン+タッチ対応の14インチ2-in-1(360度回転ヒンジ搭載)となるYoga、970gからと軽く13インチ画面でコンパクトなNanoという布陣です。
ちなみに現行モデルの発表時価格は、それぞれ1429ドルから、1569ドルから、1599ドルからという設定でした。今世代では若干ながら価格アップ基調となります(少なくとも最安価比較では)。
関連記事:
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今世代の技術的に大きなポイントは、なんといってもX1 Carbonに有機EL(OLED)パネルが選択可能となった点。解像度は2880×1800、アスペクト比はもちろん16:10で、最高輝度400ニト。色域はDCI-P3比100%と地味に広めなのがポイントです。
実は兄弟モデルとも呼べるX1 Yogaでは、2016年(!!)に有機EL版が用意されており、発表時期を基準にするとノートPC全体でも世界初でした。
参考記事:
ノートPCで世界初、有機EL搭載ThinkPad X1 Yoga実機インプレ。有機ELの漆黒や鮮烈発色がついにノートでも (2016年2月)
対してX1 Carbonでは、4K・広色域・HDR映像ソース対応といった液晶パネルこそ搭載していたものの、製品としてのバランスなどから有機ELパネルはこれまで搭載製品がありませんでした。
そうした中で今回、ついにCarbonにも有機ELの画質が楽しめるようになった、というわけです。
合わせてX1 Carbonには、液晶でも2240×1400解像度という“中間解像度”が追加されています。また最上位は現行と同様、3840×2400、最高輝度500ニト、DisplayHDR 400認証済みという液晶パネルを用意。標準では現行と同様、1920×1200解像度のIPS液晶です。
そしてX1 Yogaでも久々に有機ELパネルが復活。最上位オプションとして、3840×2400解像度、最高輝度500ニト、DisplayHDR 400認証済といった仕様のパネルが選択可能です。
X1 Nanoは、現行と同様の13インチ、2160×1350解像度(16:10)の液晶パネル。最大輝度は450nitで色域はsRGB100%をカバー。ドルビービジョンHDRソースに対応します。
そして今世代でのもう一つの大きなトピックは、3モデル共通でWebカメラに大幅なてこ入れが入ったこと。昨日発表となったThinkPad Z13とZ16と同様『コミュニケーションバー』という名称が付けられ、外観上も同社のYogaシリーズと同様「ディスプレイから少し突起が出ている」ような意匠が付けられています。
冒頭で外観がほぼ同じと紹介したのは、実はこの箇所が大きな違いとなっているため。1世代前(=現行世代)との見分けが比較的しやすいポイントでもあります。
もちろん、外観だけが変わったわけではなく、ポイントは画質の向上や暗所でも視認性を狙い、カメラモジュールが一新された点。出力解像度はフルHDに対応し、イメージセンサーは現行に比べて大型化。画素ピッチは1.4μmにまで拡大したため(これはThinkPad Z13/Z16と同等の値)、暗所などでの耐ノイズ性能などが向上しています。
そして見逃せないのが、セキュリティ堅牢性や使い勝手の向上です。
たとえば搭載された顔認証機能では、待望の「マスクをした状態での顔認証」が可能に。さらに現行世代と同じく、オプションで指紋認証との組み合わせも可能です。
さらに視線トラッキングにより「視線を画面から外した際、画面輝度を下げてバッテリー駆動時間を延ばす」といった便利な機能も搭載します。
もちろん、現行モデルで搭載されたのぞき見防止機能(使用者以外の目線を検知した際、画面全体をぼかす機能)なども継承。屋外使用時の安心感を増しています。
こうしたWebカメラに関連した新機能は、CPUであるインテル“Alder Lake”こと第12世代Core iに内蔵された画像処理エンジン、およびAI処理系ユニットと、高画質になったカメラの合わせ技によるもの。つまりCPUの世代交代が、速度アップだけではなく、使い勝手の向上などにも活かされているというわけです。
もちろんこのカメラは、テレビ会議などでも威力を発揮。集音用マイクは現行と同じく4ユニットによる『クアッドアレイマイク』構成で、遠方の話し声もクリアに集音。ドルビーラボによるノイズキャンセリングなどを備えた音声処理技術『ドルビーボイス』にも対応します。
そして、セキュリティの面ではもう一つの大きなトピックが。それは紛失防止タグ(探し物トラッカー)である『Tile』の機能を内蔵した点。単体のTileタグが備えている機能のすべてに対応するのみならず、本体に内蔵されたことで使い勝手は単体(外付け)より便利に。
電源に関しても独立しており、「本体がシャットダウンしていても最大14日間PCの場所を特定できる」とアピールします。
さて、基本性能の面では、先述したCPUの“Alder Lake”世代への交代と、それに伴うRAMやストレージの高速化(RAMはLPDDR5へ、ストレージは一部がPCI Express 4.0対応へ)といった点がポイント。
3モデルとも(Nanoを含めて)最上位構成ではTDP 28W版の『P28』シリーズを搭載可能に。最大14コア/20スレッドの同時処理により、複数アプリの実行時などに強みを発揮します。
となると当然、発熱の処理が問題となりますが、X1 CarbonとYogaでは、15インチ画面モデル『ThinkPad X1 Exterme Gen 4』で採用した『エアインテークキーボード』を新たに採用。キーボードの隙間からも吸気を行うことで、本体のサイズを変えずに空気流量を増し、冷却性能を高めています。
さらに現行モデルから採用されたデュアルファン構成も(もちろん)継承し、総合的な冷却性能を高めています。
このように2022年版ThinkPad X1シリーズは、カメラの強化による使い勝手の向上や、X1 Carbonへの有機ELパネル採用など、単なるマイナーチェンジには留まらない強化が施された世代と呼べる改良に。
ただし一方で、X1 Nanoに関しては、冷却機構に手が入ったためか、最低重量が970gからと増加した(現行は907gからなので、地味に大きな増加です)点など、細かいながら気になるポイントも。
ただしいずれにせよ、2022年版はCPUの速度アップ自体が比較的大きいこともあり、総合的な使い勝手では着実な……だけではない長足の進歩が見られる変更となりそう。
キーボードなどに大胆な変更が入ったThinkPad Zとは異なり、キー配置やTrackPointの独立ボタンなどもキープされているなど、使い勝手に関する変更も少ないため、従来からのファンにも受け入れやすい構成となっている点は、さすがの定番モデルと呼べそうです。
いずれにせよ、今世代のThinkPad X1シリーズも、モバイルノートPC全体にあって定番の一角であることは間違いなさそう。マスク時の顔認証の使い勝手などを含めて、今世代も実際に触れられるのが楽しみな仕上がりです。Source:レノボ ニュースルーム(英語版)