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最近、よくニュースで見かける“半導体不足”という言葉。パソコンやスマートフォンなど電化製品に使われている半導体ですが、不足することで私たちの生活にはどんな影響が ── 経済アナリストの増井麻里子さんに聞きます。
現在、世界的に半導体が不足している原因はいくつかあります。いちばん大きな理由は新型コロナウイルスの影響で、工場で働く人が減り、生産量が減少したことです。また、新型コロナウイルスにより、先進国とインドネシアなどの一部の新興国では、巣ごもり需要も要因のひとつ。リモートワークの環境整備をはじめ、おうち時間を快適に過ごす家電製品が売れたことで、半導体の需要が高まったと言えます。日本メーカーは半導体を作る装置では存在感を保っているものの、半導体自体の製造は競争力を失っています。経済産業省の統計によれば、1988年こそ日本メーカーが50.3%の世界シェアを占めていましたが、2019年には10.0%まで低下しました。そのため、現在は海外に依存しているのが現状です。2021年はコロナ禍による人手不足で、港湾が混雑し、沖でコンテナが数日間も待つという事態も発生しました。部材調達の遅延や輸送費の値上がりなどで半導体が高騰し、不足がさらに進んだのです。
そもそも半導体とは、鉄や銅など電気を通す「導体」と、ゴムのように電気を通さない「絶縁体」の中間に位置するものです。温度が高くなると電気を通しやすくなる性質があるため電化製品の制御に適しており、情報を記憶する、数値の計算や処理を行うなどの機能をもっています。私たちのまわりにある電化製品のほとんどに、現在は半導体が使われています。パソコン、携帯電話、冷蔵庫、テレビなど、挙げればキリがありません。最近は技術の進歩により、電化製品の寿命はどんどん長くなっています。壊れにくいと当然、新しい製品は売れません。そうするとメーカーの経営はどんどん厳しくなるのです。ハイアールなどの中国メーカーが日本市場に入り込み、競争が激しくなっています。初期不良を減らし、カスタマーサポートを充実させてきました。そのためメーカーは製品価格を上げたいのですが、ただ高くなっただけでは消費者は買ってくれない。よって、日本メーカーは高付加価値化をめざしています。たとえば、洗濯機にはインバーター式とそうでないものがあります。インバーター式は、洗濯物の重量や洗い方に合わせてモーターの回転を細かく調整するため、電気代の節約につながります。最近ではIoT(Internet of Things)と呼ばれる、“モノのインターネット”も注目されています。たとえば炊飯器やロボット掃除機は、スマートフォンから遠隔操作すれば、その場にいなくても稼働させることができます。このように物をインターネットに接続する技術がIoTです。この技術にも半導体が使われているのです。