Engadget Logo エンガジェット日本版 『OPPOと言えばカメラスマホ』独自開発チップセット「MariSilicon X」で目指すOPPOの野望(山根博士)

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OPPOは12月14日に開催されたテクノロジーイベント「OPPO INNO DAY 2021」にて、独自開発したチップセット「MariSilicon X」を発表しました。

MariSilicon XはNPU(Neural network Processing Unit)やISP(Image Signal Processor)を統合し、6ナノプロセスで製造されるチップセット。主に画像処理エンジンとして使われ、リアルタイムRAW処理などスマートフォンのカメラ性能を大きく高めることが可能です。MariSilicon XはOPPOのフラッグシップモデル「Find X3 Pro」と比較して20倍の動画処理速度を実現しており、システムパフォーマンスも17%高められます。SnapdragonやDimensityなど統合チップセット内蔵のISPよりも高速かつ高度な処理が可能です。

OPPOはMariSilicon Xを2022年第一四半期に発売予定の「Find Xシリーズ」最新モデルに搭載する予定です。製品名称が「Find X4 Pro」になるのかはまだわかりませんが、OPPOはスマートフォン本体の上部がモーターでスライドし高画質なフロントカメラが現れる「Find X」を2018年に発売して以来、カメラの強化に取り組んできました。MariSilicon Xはこれまでのスマートフォンのカメラでは実現できなかった映像体験を提供してくれるでしょう。

Androidスマートフォンは統合チップセット(SoC)としてクアルコムの「Snapdragon」、メディアテックの「Dimensity」、サムスンの「Exynos」などを採用しています。「統合」ということからわかるように、これらチップセットにはCPU、GPU、NPU、ISP(Image Signal Processor)、5Gモデムなどが統合されています。SoCはスマートフォンの処理だけではなくカメラの画像処理やAI処理も行ってくれるわけです。

ところがOPPOはチップセットのISPには満足せず、自社でイメージングに特化したMariSilicon Xを開発しました。自社チップセットを搭載する大きなメリットは、異なるSoCを搭載したモデルでも写真や動画の仕上がりを同じものにすることができる点です。

たとえばOPPOが海外で発表した最新のスマートフォンのSoCを見てみると、「Reno7 5G」がSnapdragon 778G、「Reno7 Pro 5G」がDimensity 1200を搭載します。同じシリーズモデルで写真の仕上がりが異なればユーザー体験は大きく低下しますし、仮に上位モデルの画像AI処理に時間がかかったり動画撮影への制約が起きれば、製品の評価にも影響します。

一方、MariSilicon Xを搭載したスマートフォンならば、全体のパフォーマンスをSoCそのもののパワーでコントロールしつつ、画像処理を自社チップセットでカバーできるため、「どのスマートフォンで撮影しても同じ撮影結果が得られる」わけです。「OPPO Aシリーズ」などの低価格モデルはSoCの処理能力が低く、写真の仕上がりが上位モデルに劣りましたが、仮にMariSilicon Xを搭載すればカメラ性能だけは大きく高めることができるのです。

またそれだけではなく、最高のカメラ体験を提供するのであれば、もはやSoCメーカーの開発を待っている時間はないという焦りがあるのかもしれません。OPPOはカメラセンサーでソニーと協業を行っており、「IMX766」など優れたセンサーを市場に送り出しています。両者協業のセンサーはまずOPPOが採用し、その後他のメーカーにも展開されます。OPPOは共同開発により他社よりいち早く最高のカメラ体験を提供することができるわけです。

SnapdragonやDimensityのSoCに統合されているISPは各社が同じものを使うため、ハードウェア部分では他社との差別化が難しくなります。またOPPOがより高度な処理能力をISPに求めても、SoCメーカーが対応するには時間がかかります。

一方、MariSilicon XはSnapdragonやDimensity内蔵のISP性能を超える20ビットRAWデータ撮影や4Kナイトモード撮影に対応します。これだけでもOPPOのスマートフォンの魅力を高めてくれるでしょう。今やスマートフォンに最も求められるカメラ性能を引き上げ、他社との競争に打ち勝つためには、独自のイメージングプロセッサを開発するしか生き残りの道はないのです。

グーグルやアップルほどの企業規模があればSoCそのものを独自開発することも可能でしょうが、中国の大手メーカーにはまだそこまでの力はありません。それでもOPPOより先にvivoは9月にイメージングプロセッサ「vivo V1」を発表し、最新フラッグシップモデル「X70シリーズ」に搭載しています。X70のカメラ性能はこれまでのvivoのスマートフォンよりも評価が高く、このチップセットの効果が最大限発揮されているようです。またシャオミも4月に「Surge C1」を発表しています。実はすでに中国大手メーカーによる映像処理の高性能化競争は始まっているのです。

スマートフォンのカメラ性能の指標の一つ、DXOmarkではファーウェイのスマートフォンが今でも高いスコアを示しています。しかし米制裁の影響によりこれからファーウェイの存在感は低下していくでしょう。その状況の中でOPPOは「ポスト・カメラフォン」としてのメーカーイメージをMariSilicon X搭載モデルにより植え付けようとしているに違いありません。2022年、OPPOのスマートフォンのカメラ性能には大きく注目したいものです。

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