【ワシントン、北京時事】サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)と中国外交担当トップの楊潔※(※竹カンムリに褫のつくり)共産党政治局員は6日、スイス・チューリヒで会談し、年内にオンライン形式で米中首脳会談を行うことで原則合意した。米政府高官が明らかにした。台湾情勢などをめぐり米中の緊張が高まる中、対立激化を避けるために首脳間の意思疎通を維持、強化する必要性で一致した形だ。
中国外交トップとスイスで会談へ 緊張継続も意思疎通維持―米補佐官
米側は対面協議を模索してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、習近平国家主席は昨年1月のミャンマー訪問以降は外遊していない。両国は、20カ国・地域(G20)首脳会議などに合わせた対面会談は困難と判断。オンライン形式で、2度行った電話会談よりも本格的な会談を行いたい考えとみられる。バイデン大統領は1月の就任以来、中国に競争と協調の両面で臨む方針を示してきた。競争面では、日米、オーストラリア、インド4カ国の連携枠組み(クアッド)の首脳会談や、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」創設など同盟国や友好国の結集を図り、中国への対抗を前面に打ち出した。ただ、バイデン氏は9月の国連総会一般討論演説で「(米中の)新冷戦は求めていない」と表明。競争が紛争に転じるのを避けるため、利害が一致する問題での協調を模索している。米司法省は9月、カナダで拘束されていた中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長の起訴を猶予し、帰国を認めた。貿易面でも近く閣僚級協議を再開する予定で、こうした対応の延長線上にオンライン会談を位置付けているもようだ。一方、中国は習氏の3期目続投が確実視される来年秋の共産党大会に向けて内政に集中する時期に入った。来月は重要会議の第19期中央委員会第6回総会(6中総会)、来年2月は北京冬季五輪と、重要行事を次々と迎える。電力不足や不動産開発大手・中国恒大集団が暗い影を落とす景気の下支えなど内政課題が重くのしかかる中、外交上最重視する対米関係が一層悪化する事態は望んでいない。楊氏は会談でサリバン氏に「中米が対抗すれば両国や世界は著しく損害を受ける」と訴えた。習氏は9月、国連総会でのビデオ演説で、米主導の「対中包囲網」構築をけん制しつつ、国外での石炭火力発電所の新設に関与しない方針を初めて示した。バイデン氏が重視する地球温暖化問題をカードに協調関係の糸口を探る狙いとみられ、オンライン会談でも論点の一つになりそうだ。