今週、クアルコム「Snapdragon Tech Summit」が開催されたが、基調講演ではグーグルのプラットフォーム&エコシステム担当バイスプレジデントであるヒロシ・ロックハイマー氏が登壇。「オープンソースによる水平分業体制により、Androidからイノベーションが起こる」とアピールされていた。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年12月4日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
しかし、世界のトレンドは水平分業から着々と垂直統合に移りつつあるようにも見える。
アップルが自社設計チップであるiPhone向けAシリーズをベースにM1シリーズをiPad ProやiMac、MacBook Proに拡大。
米中貿易摩擦の陰で、もはや見る影もないがファーウェイもかつては自社グループ会社による設計のチップセットがあったからこそ、画像処理で他社を引き離せた感がある。
今年、グーグルは自社設計チップ「Tensor」を開発し、Pixel 6シリーズに搭載した。Pixelシリーズというお世辞にも世界で売れているとは言いがたいスマートフォンだけにTensorを載せるというのはスケールメリットがあまりになさ過ぎる。事業を維持することを考えるなら、グーグルがAndroidとセットでTensorをメーカーに売っていくという可能性も考えられるのではないか。
特に高性能ではなく、低価格なTensorを作り、メーカーに卸せば、エントリーモデルでもAI処理能力の高いスマートフォンができあがる。新興国などでAndroidを展開するには「安いTensorをばら撒く」という選択肢もアリなのではないだろうか。
基調講演では、クアルコムのクリスチアーノ・アモンCEOとグーグルのヒロシ・ロックハイマー氏ががっちり握手するなど、両社の友好な関係が見えたが、実際のところどうなのだろうか。
Snapdragon Tech Summitのメディア向け質疑応答の機会があったので、「グーグルがTensorを載せてきましたけど、どう思います?」と率直に聞いてみた。
モバイルコンピュート・インフラ部門担当シニアバイスプレジデントであるアレックス・カトージアン氏は「そうしたことは、スマートフォン市場で特に目新しいことではない。実際、サムスン電子は自社開発とクアルコム、両方を採用している。
クアルコムはコンピュータ、コミュニケーション、マルチメディアに関しての技術を35年にわたって提供してきた。モバイルに適した最高級の技術とソリューションを生み出してきた歴史と、それだけの能力がある。
我々は市場に最適なソリューションを提供するし、グーグルは別のソリューションを生み出す独自の方法があるのだろう。
Androidのエコシステムは大きく、クアルコムはソリューションを多くのメーカーやパートナーに提供している。だからこそAndroidというエコシステムは繁栄し、我々は競争で生き残っている」と語った。
また、モバイルハンドセットビジネス担当シニアバイスプレジデントのクリストファー・パトリック氏も「この市場は常に競争が激しい。誰が出てこようと競争するということに変わりない」と強調した。
クアルコムとグーグルの関係性はこれからも注視しておいた方が良さそうだ。
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