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Googleから自社開発チップを搭載した最新モデルが登場、Androidスマホはこの先どう進化する?

書かれた 沿って mobilephonebrand

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回はPixelシリーズを中心に、最新のAndroidスマートフォンについて話し合っていきます。

※新型コロナウイルス感染拡大対策にインターネット会議を行っております

Androidの標準機!? グーグル「Pixel 6」シリーズは自社開発プロセッサ搭載

房野氏:各メーカーから続々と最新Androidスマートフォンが発表されていますが、みなさんはどのような印象をお持ちになりましたか。

房野氏

石川氏:毎年9月から10月の時期に、iPhoneの最新モデルが発売されるので、Android勢は対抗手段として、8月中旬から目玉となる製品を続々と発表しているのでしょう。注目はGalaxyの折りたたみ2モデルが、進化しながら価格を抑えることで魅力的になっているところでしょうか。

グーグルのPixelはハイエンドの「Pixel 6」には自社開発プロセッサの「Google Tensor」を搭載して差別化できている一方、「Pixel 5a(5G)」は悩ましい。

Galaxy Z Fold3 5G

Galaxy Z Flip3 5G

Pixel 6

自社開発プロセッサの「Google Tensor」(イメージ)

Pixel 5a(5G)

石川氏

石野氏:前モデルの「Pixel 4a(5G)」からの進化がほぼ見られないですよね。

石野氏

石川氏:そうなんだよね〜。型番を変えてまでやることなのかなぁ。ほかのメーカーは3~4万円台で販売しているのに、5万1700円という価格はいかがなものかと。もう少し安くても良かったのではないかと思います。

石野氏:XiaomiやOPPOから4万円程度で同等スペックの端末が出ているけど、OSのアップデートに対する不安などがあるのも事実。そういう意味だとPixelは3年保証を出してしっかり差別化できています。

あと、しれっと「Pixel 5」「Pixel 4a(5G)」を終売にしているので、今から新しくPixelを買おうと思った人には最新モデルしか用意されていない。Pixel 5a(5G)はPixel 5と比べると安くなっているので、全くダメではないかな。

石川氏:そもそも2020年のラインアップ自体にもやっとした感じがあったので、そこをまだ引きずっている印象も受けます。

石野氏:多分2020年のPixel 4a(5G)がイレギュラーで、Pixel 4aがあったので本来なくてもよかったけど販売することになってしまった。当時は5Gに対応するCPUは、いちばん安くてもSnapdragon 765Gしかなかった。それで仕方なく採用した結果、価格が6万円くらいと中途半端になった。従来は廉価版モデルという設定だったのに、「Pixel a」シリーズとしては価格もスペックも高くなりすぎてしまいました。今回のPixel 5a(5G)は、本当の意味でPixel 5の廉価版として出てきた感じですね。

石川氏:グーグルが何をしたいのかがいまいち見えてこない結果になった。それから、“世界で唯一ソフトバンクが取り扱う”という話だけれど、ほかのキャリアは扱わないんだなと。アップルのようにキャリアへ積極的に売らせるという戦略ができていない。ドコモもauも“売れない端末”と判断してしまっている感じもするので、そこがつらいですね。

法林氏:コロナ禍で、キャリア側の予算がかなり限られているタイミング。ない袖は振れないという話でもある。

日本とアメリカでしか販売しないけれど、もし日本で売らなかったら困る開発者もいるし、昔の「Nexus」シリーズのような〝お手本モデル〟的な意味合いをPixelシリーズに求めている人もいます。グーグルの端末として考えれば、今回のモデルチェンジはありかなぁと、個人的には思っています。

法林氏

石野氏:グーグルはとにかく、Androidのシェアを上げたいと考えている、そんな話を聞いたことがあります。iPhoneユーザーは、ブラウザにSafariを選ぶ人が多くて、仮に検索をSafariからされると、グーグルはアップルに支払いが発生する。ちょっと調べたんですが、この支払い額が、年間1兆円以上とかの規模になっているんですよ。

半導体不足で大量にスマートフォンを生産できない中、Pixel 5a(5G)をどの国で売るかと考えた時、iPhoneのシェア率が約半数もある日本、そして、アメリカもiPhoneのシェア率が高いので、対抗策として投入する必要がある。欧州はXiaomiやOPPOといった、AndroidOSユーザーに、頑張ってもらおうという算段だと思います。

法林氏:半導体不足問題は結構深刻で、聞いた話だとチップセットが足りないという次元ではなく、色々なものが作れなくなっているらしい。

石野氏:CPUやGPUだけでなく、ディスプレイのコントローラーとか充電用のICとか、スマートフォンには様々な半導体が使われています。どれか一つでも欠けると、当然スマートフォンは作れないという話です。

法林氏:電源回りが特につらいみたいだね。スマートフォンだろうがPCだろうが、電源は重要な部分なので、この生産が滞っちゃうと厳しい。

石野氏:アップルも半導体が足りなくなるかもしれないと、新型iPhoneの発表前にアナウンスしていますね。

SIMフリースマートフォンが続々登場! HUAWEIの最新フラグシップモデルは日本で発売されない?

房野氏:ASUSから「Zenfone 8/Zenfone 8 Flip」も発売されましたね。

Zenfone 8 Flip

法林氏:「Zenfon 8 Flip」には今さら感があるというか、折りたたみスマートフォンの時代に、まだカメラを回転させるというギミックが必要かな? って思った。一方で、「Zenfone 8」は頑張ったかな。

ただし、告知の仕方が今ひとつな印象がある。日本で本気で売るには、体制をしっかりと整えて告知しなければ厳しい。XiaomiとかOPPOですら、まだまだ知名度は限られたメーカー。ASUSのやり方はちょっと、詰めが甘いかな。

Zenfone 8

石川氏:ASUS内での方針が変わっちゃった感じもありますよね。

Googleから自社開発チップを搭載した最新モデルが登場、Androidスマホはこの先どう進化する?

石野氏:「Zenfone 8」には、シリーズ初のおサイフケータイ対応というトピックはありますけど、今さら感は正直ありますよね。

法林氏:防水防塵にも対応したけどね。

石川氏:サイズ感はコンパクトで、小さいスマートフォン好きの自分としては好ましいですが、以前のようにSIMフリースマホ市場でASUSが積極的に支持されるには、もう少し製品のインパクトが欲しかったですかね。

石野氏:ASUSは本社の方針でミドルレンジの販売をやめました。今の流れだと普通は、おサイフケータイを乗せるならミドルレンジ。それで、OPPOやXiaomiに対抗したいところなのに、ハイエンドモデルにこのタイミングで、まず、おサイフケータイを搭載するかぁ……とちょっとがっかりしました。

ASUSは一時、SIMフリースマートフォンのシェア率で、トップだったメーカー。なのに、おサイフケータイを搭載するのが、後進のOPPOやXiaomiより遅いとなると、日本市場を重視していないのかなと思ってしまいます。

法林氏:中途半端といっちゃうとかわいそうかもしれないけど、このあたりの取り組み方は、ちょっと微妙だよね。

石川氏:どこまでASUSが製造しているのかも、ちょっと疑問ですよね。

法林氏:ODM(製品の設計から開発までを受託者が行う形態)で、どこかの工場から引っ張ってきてる可能性も否定できないね。

あと、個人的な憶測なんだけど、日本向けのスマートフォンを作るODMメーカーの中にFeliCaのモジュールをうまく組み込めたところがあるんじゃないかな。じゃないと、FeliCa搭載のSIMフリースマートフォンが、最近になって一斉に発表されている事に対して、説明がつかないと思う。OPPOが初めにFeliCaを搭載した時は、富士ソフトが全面協力だったという話だけど、そのころとは次元が違うレベルで開発されている気がします。

石川氏:自分もそう思います。Xiaomiにしても、どこまで自社で生産に関わっているのか、気になります。

石野氏:FeliCaネットワークスも、裏で活躍している感じもしますよね。

房野氏:中国ではファーウェイが最新フラグシップモデルの「HUAWEI P50」シリーズを発表しましたが、こちらはいかがでしょう。

P50 Pro

法林氏:またすごいモデルを出したなというか、Leicaはやっぱりこういう組み方だよなと感心したけれど、何か遠い国での話のように感じました。

石川氏:あれだけ5Gで頑張っていたメーカーなのに、4Gしか搭載できないのは残念でした。

房野氏:「HUAWEI P50」シリーズは中国専売になるのでしょうか。

石野氏:中国専売になったとしても、中国国内はもう5G対応じゃないと売れない、ローエンドスマートフォンですら5G対応になっている状況なので、ハイエンド端末が4Gのみとなると、台数を多く販売するのは、難しいんじゃないですかね。タブレットはWi-Fi通信だけにして、制約をうまく回避して作っているんですけどね。

法林氏:あとPCもだよね。日本市場でファーウェイは、PCとタブレットで頑張っていくんじゃないかな。

石野氏:そうですね。アプリのバラエティの広さは、スマートフォンほど必要ないので、Office代替のソフトなどがあれば、しばらくはやっていけるのではないでしょうか。

法林氏:あとは、スマートウォッチとかオーディオ系かな。激戦区ではあるけどね。

ドコモの「home 5G」はテレワークの救世主になり得る?

房野氏:話は変わりますが、ソフトバンクからデータ通信専用の料金プラン、ドコモからホームルータープランの正式な提供開始日などがリリースされましたがこちらはいかがでしょう?

石川氏:ソフトバンクの「データ通信専用3GB」プランは正直よくわからないというか、「5年おトク割(データ通信)(5年間)」で、なんで5年も縛る必要があるのかな。それと、5年後の通信環境を考えた時、なぜ3GBで足りると考えているのかな。そもそもの設定が間違っている印象を受けます。

ドコモの「home 5G」はソフトバンクの「Softbank Air」に対抗するために井伊社長がずっとやりたがっていたことなので、いよいよ参戦かといったところですね。加えてauも対抗して料金改定してきました。

テレワークが当たり前になってきて、マンションなどの集合住宅では通信速度が出にくくなっている。そんな人には、導入するメリットがある。本来なら新生活が始まる前、3月までに出すべき製品だから、発売のタイミングは遅いけれど、来年に向けて注目したいですね。

home 5G

石野氏:ドコモには、家の外までアンテナが伸ばせるモデルなども、積極的にリリースしてほしい。5Gの高い周波数帯は、家の中まで入りづらいです。今のモデルラインアップだけだと、窓際に設置するしかない状況です。

法林氏:ルーターの基本になるソフトウエアを作っているメーカーがいて、日本で売っている家庭用のルーターのほとんどは、そういったメーカーからソフトを買っています。でも、自社でUIを加えたり、通信各社も工夫していますね。

石野氏:古いマンションだと、いまだにVDSL(マンション内の各部屋への配線に電話用のメタル回線を使う仕組み)だったり、マンションが一括で借りている固定回線の場合、通信利用が集中してしまう時間帯は速度が出にくい。ホームルーターの需要って、案外ありますよね。

法林氏:メインターゲットは、賃貸で独り暮らしの若い世代や働きに出ている20代あたりかな。昼間は家にいないけれど、夜は帰ってきて回線を利用する層でしょう。結婚して家を買ったり、家を新築したとなると、光回線を引いたり、CATVインターネットを選ぶ方向に進むと思います。

石野氏:マンションの回線は、どうしても後回しになることが多いというか、どの回線がどんな速度で利用できるか、きちんと開示されていないケースが多い。いざ入居してみると、新築なのに通信速度が遅い場合もある。速度に不満を持つ人が、テレワークやステイホームをきっかけに、手軽なホームルーターに食いついてくるかもって思います。

法林氏:もともと固定回線の通信速度って、一人で使うならそこまで必要はないだろうけど、マンションで暮らしている各住民が、同じ時間帯にテレワークをはじめるとなると、かなり厳しいでしょう。

石川氏:これまではダウンロードをする場合が多かった。通信速度が多少遅くても、ちょっと待てばよかった。でも、ビデオ会議などはリアルタイムでコミュニケーションをする必要がある。ここ2年ほどで、インターネットの使われ方は、大きく変わっています。

ただし、ドコモのCMで「世界が変わる」と言っていますが、ちょっと引っかかるというか、ソフトバンクが数年前から言ってるじゃんって突っ込みたくなる。

房野氏:ドコモのホームルーターはリースですか?

法林氏:基本的には買取だけど、ドコモにはかつての「月々サポート割」があって、3年使えば本体が実質タダになります。

......続く!

次回は、新型「iPhone 13(仮)」について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘文/佐藤文彦