日本でも年々Xiaomiの存在感が増していることを実感する人も多いだろう。2021年は2020年に続き、中国メーカーの躍進が目立った1年だった。2022年も各社の勢いはとどまることはなく、SamsungやAppleを一時的に抜くパフォーマンスを見せることだろう。各社の2021年の動きを振り返りつつ、2022年の動向を推測してみた。
2021年第2四半期(4〜6月)のスマートフォン出荷台数で、XiaomiがAppleを抜いたこと(カウンターポイント調査)は大きなトピックだった。例年、Appleは第2四半期の出荷量が四半期中で最低となることから、この動きは瞬間的なものとみられるが、第3四半期では再び2位となったAppleとXiaomiの差はわずか1%。Xiaomiの今の勢いは一時期のHuaweiを思わせる。
2021年第2四半期、XiaomiはAppleを抜いて2位となった2020年まではSamsungに次ぐ2位の位置にいたHuaweiの姿は既に見当たらなくなった。そのHuaweiと入れ替わるように存在感を示しつつあるのがrealmeである。realmeは2018年の創業から37カ月でスマートフォン総出荷量1億台を突破。中国に次ぐスマートフォン市場であるインドではSamsungを抜き、Xiaomiに次ぐ2位に位置している。インドの大手ECサイト「Flipkart」の販売シェアは過半数に達するという。グローバルでの出荷シェアはまだ10%に達していないものの、2021年第2四半期、第3四半期ともに5%の数字を残している。
2021年第3四半期はAppleが2位になるもXiaomiとは小差。realmeの存在感が光るrealmeはOPPOの低価格モデルブランドとしてインド向けに登場し、販売が好調なことから分社化されOPPO、OnePlusと共に同じグループの傘下企業となっている。OPPOは独自に低価格モデルを含む「OPPO Aシリーズ」を展開しているが、格安モデルを出さないことで一定のブランドイメージを維持している。realmeはOPPOが出さない激安モデルや、ゲーミングを意識した「とがった」モデル、さらに日本人デザイナー深澤直人氏とのコラボモデルを出すなどして、若い世代から大きな支持を得るようになった。
「realme GT 大使探索版」。深澤直人によるスーツケースデザインが大きな特徴だrealmeは今後得意とする新興国市場で着々と販売数を高めていくだろう。その動きは数年前のXiaomiのRedmiブランドが躍進した姿と重なる。Redmiは圧倒的なコスパで着々と人気を高め、人気の高まりに合わせるようにゲーミングモデル「Kシリーズ」などを投入していった。一方realmeは格安モデルにとどまらず、前述したように既にハイエンドやファッションモデルも出しており、製品に対するイメージはXiaomiのRedmiよりも良好だ。realmeの勢いは恐らくRedmiを超えるものとなり、Xiaomiにとって大きな脅威になるに違いない。日本ではまだスマートフォンを出していないが、2022年はいよいよ製品投入があるかもしれない。
一方、各メーカーのお膝元、中国市場ではどのような動きがあったのだろうか。カウンターポイントの中国国内スマートフォン出荷台数のグラフを合成して比較を行ってみた。調査時期によりHuaweiが単独、Huaweiから独立したHonorが単独、Huaweiが「その他」に含まれるため、同じ時期に2本の棒グラフがあるのは両方を合わせて見ていただきたい。一部シェアの数字に1%のずれがあるのは計算上の誤差(四捨五入)と思われるので無視して構わない。
カウンターポイントのグラフを合成して中国国内のスマートフォン出荷数を比較1年以上前の2020年第2四半期を見ると、Huaweiは33%と圧倒的なシェアを誇っていた。しかしこの数字は当時まだHuaweiのサブブランドであったHonorを合算した値だ。Honor単独だと14%のシェアで、Huawei単独だと33-14=19%のシェアであったことが分かる。この数字はvivoとOPPOの16%と大きな変わりはなく、この時点でHuaweiのシェアはライバルにかなり追い付かれていたわけだ。
その1年後、2021年第2四半期のシェアを見ると、Huaweiの出荷台数分を他社が分け合って奪い、同年1月から独立したHonorはシェアを下げている。しかし魅力的な新製品を次々と投入したことでHonorは出荷台数を増加させ、もともと中国では十分知られていたブランドだったということもあり、2021年第3四半期にはXiaomiを小差で抜くほど出荷台数を増やしている。Huaweiは同期の単独の数字が不明だが、その他15%の中で半数くらいだろうか。Honorは今後折りたたみスマートフォンの投入も予定されており、中国国内で最も注目されるメーカーになろうとしているのだ。
中国で上位メーカーの仲間入りを果たしたHonor。折りたたみスマートフォンも間もなく登場する2020年に年間出荷台数3億台を超えた中国は、世界最大のスマートフォン市場である。しかし折からの半導体不足や中国国内の消費の鈍化が危惧されており、2022年の中国市場は出荷数が前年割れになるとの予測もある。vivoやOPPOはグローバルでシェア上位だが、出荷数の大半を中国市場に頼っており、中国国内の動向がそのまま全体の出荷量を大きく左右する。両社はグローバル市場重視の戦略に方向転換することが課題だが、2022年も引き続き海外市場をどう攻めるかが注目される。
OPPOは前述したように低価格モデルはrealmeに任せ、自らはハイエンド、ミドルレンジに特化して製品展開を行ってきた。しかしハイエンドではSamsungやAppleの対抗製品は出せておらず、ミドルレンジモデルは競争が激しい。OPPOの主力モデルはミドルハイレンジの「Renoシリーズ」でソニーと協業した最新のカメラセンサーを搭載するなどしているが、今やどのメーカーのカメラも性能は大きく上がっている。
そこで折りたたみスマートフォン「Find N」の投入や独自の画像処理チップ「MariSilicon X」を開発するなどして、テクノロジーリーダーとして業界内での存在感を高めようとしている。とはいえ、Find Nの投入は現時点では中国市場のみだ。Find Nは早い時期に海外展開するべきだろう。
OPPOが開発した独自の画像処理チップ「MariSilicon X」グローバルでの競争力が高いXiaomi