4月8日、中国のネットの一部界隈は「米粉節」なるお祭りでにぎわっていた。「節」は中国の正月「春節」の「節」と同じお祭りを表し、「米粉」は「スマートフォンメーカー小米(Xiaomi)のファン」を意味する。つまり「小米ファン祭り」というイベントだ。この祭りでは、同社製品を時間限定ながら過去最安の割引き価格で販売。その結果、12時間で実に130万台・15億元(約240億円)という驚くべき販売記録を打ち立てた。
小米の最新モデル「小米3」。クアッドコアSnapdragon 800/2.3GHzかTegra 4/1.8GHz、2Gバイトメモリ、5インチフルHD(441ppi)IPS液晶ディスプレイ、厚さ8.1ミリのマグネシウム合金製ボディ──で16Gバイトモデルが1699元(約2万8000円)小米(mi.cn)はいま中国で人気急上昇中のAndroidスマートフォンメーカーだ。調査会社Counterpoint Technology Market Researchによると、中国の2014年1〜3月における販売台数シェアは11%。これは韓国Samsung Electronics(18%)、中国Lenovo(12%)に次ぐ3位で、米Apple(10%)をしのぐ。中国最大手のブログサイト「QQ空間」において、大型連休期間中にアップされた写真のうち、小米で撮影された写真はiPhoneに続き2位と、ユーザーのアクティビティも高い。
TrendForceによる14年1〜3月期のスマホ世界シェア中国での急成長の結果、世界市場でも存在感を高めてきている。市場調査会社TrendForceによると、今年1〜3月のスマートフォン出荷台数は2億6700万台で、メーカー別ではトップの韓国Samsung Electronics、米Appleに続き、7位の小米はシェア4.0%と、6位のソニーに肩を並べるところまできている。
小米の発表によれば、1〜3月の出荷台数は1100万台に上り、年間出荷台数は5000〜6000万台と予測。2015年には年間1億台に達する勢いだ。
小米はソフトウェア会社・金山軟件の雷軍CEO(44)が創業した。金山軟件は英語ではKingSoftと表記し、日本でもオフィスソフトやセキュリティソフトを低価格でリリースしていることで知られる。昨年8月には、GoogleでAndroid製品管理ディレクターを務めたヒューゴ・バラ氏が小米に副社長として入社し、開発力の強化をアピールした。
小米登場までの中国製スマートフォン/携帯電話といえば、自称「百花繚乱」、客観的には「有象無象」ともいえる「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」式の、とにかく機種数をそろえることを第一としたものだった。だが小米は、AppleがiPhoneという1機種に注力したように「小米手机」(「手机」は携帯電話の意味)というスマートフォン1機種に注力した。WebサイトもiPhoneの紹介ページからインスパイアされたようなデザインだ。
初代「小米手机」は2011年8月に発表。iPhoneのような広告でアプローチしたセンスの光る製品が、比較的ハイスペックかつ衝撃的な1999元という低価格(当時としては)で登場し、しかも販売は同社サイト限定。普段IT系ニュースをチェックしているようなマニアや、自分の店で転売したい販売業者が予約に殺到した。
低価格は、1機種限定でInventecやFoxconnに生産委託をすることで実現。しかもWebでは常に販売しているわけではなく、しばしば「10万台限定予約販売」という形をとった。その結果、「予約のニュースが報じられマニアや業者が関心を持ち」→「10万台の予約数がいっぱいになればまたニュースで報じられマニアや業者がさらに関心を持ち」→「しばらくしたらまた予約販売開始が報じられ……」──といった流れが毎月繰り返され、小米は有名になっていった。
小米は常に話題を振りまき、ネットのトレンドでも他社を突き放す2012年6月以降は限定販売ではなくなるものの、同年8月には小米手机よりさらに500元安い1499元の新機種「小米手机1S」を発表。再び「数十万台限定発売」→「あっという間に予約数到達」の報道が数カ月繰り返された。その後も小米手机の後継機種「小米手机2」「小米手机2S」「小米手机3」と、1000元を切る低価格モデル「紅米手机」のリリースへと続いていく。
小米製品は現在家電量販店でも購入可能に小米はスマートテレビでも高いコストパフォーマンスで攻める小米に対抗するOPPOの専門店1機種入魂の小米の後には、「OPPO」や「魅族」(Meizu)という「ハイスペック&低価格のスマートフォンを1機種投入」という同じコンセプトのメーカーが追随する形で登場した。しかも後出しだけあって、小米以上に見た目もスマートで質感もよく、マニア受けしそうなハイスペックなモデルを競合する価格で投入した上、ネット直販だけでなく実店舗も設けて販売することで小米と差別化。これはマニアには小米手机以上に好評だった。
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