サムスンが2月にグローバル発表したGalaxy S20シリーズ。5Gを標準サポートしたことに加え、高度なカメラ機能を搭載していることも注目されました。シリーズ3モデルの中でも最上位版のGalaxy S20 Ultraは、1億画素(108メガピクセル)センサーを中心とした4眼カメラを搭載し、100倍ズームなど高度なカメラ機能を強みとします。本記事では、米Engadget レビュアーのCherlynn LowによるGalaxy S20 Ultra評をお届けします。
【Galaxy S20 Ultra】スコア:80点/100点長所・パワフルなパフォーマンス・鮮やかなディスプレイ・カメラ機能の豊富さ短所・重すぎる・高価
Galaxy S20 Ultraの見どころは実に豊富です。120Hz駆動の大画面、シャープなセルフィーが取れるインカメラ、高速な5Gのサポート。そしてメインカメラは3カメラとToFセンサーを備え、1億800万画素(108メガピクセル)の鮮明な写真、8Kビデオ、100倍デジタルズームで写真を撮ったりできます。一方で、カメラのソフトウェアの出来はイマイチで、ポケットに収まらない本体サイズと重さもネックになります。そして優れた機能を揃えたスマートフォンであることは間違いありませんが、1400ドル(約15万円)という価格に見合うほどインパクトには乏しいように思えます。
■サイズ感
まず検討すべきことは、Galaxy S20 Ultraのサイズ感を許容できるかでしょう。6.9インチの大画面を備え、パーツを非常に高密度に詰め込んだこのスマホの重さは、わずか1日テストしただけで私の左手の指と腕に痛みを与えました。
公平を期すために補足しておくと、Galaxy S20 UltraはiPhone 11 Pro Maxよりわずかに大きい程度で、重さはそのiPhoneと4gしか代わりません。そして、iPhone 11 Pro Maxの6.5インチディスプレイよりも、うんと大きい画面を備えています。ただし、222gというこのスマホの重さは、わずかに小さい6.8インチディスプレイのGalaxy Note 10+ 5G(198g)と比べても24gも重く、重量級の作りと言えます。
■高解像度とスーパーズームカメラ
S20 Ultraでまず注目すべきはそのカメラ機能です。1億800万画素(108メガピクセル)のメインカメラに視野角123度の12メガピクセルの超広角カメラを備えたトリプルカメラ(+深度センサーでクアッドカメラ)です。しかしもっとも興味深いのは48メガピクセルの望遠カメラが、この巨大なスマートフォンの背面にある出っ張りに折りたたまれた状態で格納されていることでしょう。
大きくてシャープなセンサーのおかげで、S20 Ultraで撮る写真はGalaxyの過去のフラッグシップよりも明るく、カラフルで鮮明です。しかし、Galaxyの独特な画像処理アルゴリズムは依然としてかわらず、かなりアグレッシブな画作りになる上、細部の描写が甘くなってしまいます。
108メガピクセルカメラの初期設定では、サムスンが「ノナ・ビニング」と呼ぶプロセスを使用して、12メガピクセルの画像を記録します。隣り合った9つの画素を大きな1画素として扱うことで、1センサーあたりで撮れる光の量を増やす技術です。原理的にはノイズの少ない明るい写真が撮れるはずですが、撮影する解像度に関係なく、あまり精細感はありません。せいぜい、Galaxy S10から少し改善された程度でしょう。クセのある画像処理はライブフォーカスとナイトモードでも観られます。前者は画像の背景に人工的なぼかしを追加する機能ですが、このアプローチに競合に遅れをとっています。GoogleのPixelやiPhoneでさえ、人物を認識してより現実味のある自然なぼかしを加えるようになっています。低照度撮影やナイトモードはS10と比較して改善されていますが、Pixelの方がノイズ低減能力やより暗い場所での撮影性能に秀でています。
▲S20 Ultraのライブフォーカス撮影作例高解像度なカメラに加えてGalaxy S20シリーズの大きな特徴となっているのが、サムスンが「スペースズーム」と呼ぶズーム機能です。Galaxy S20とS20 Plusでは、被写体に対して30倍のズームをかけることができます。対するS20 Ultraでは光学ズームとデジタルズーム、それにちょっとのAI処理の組み合わせで、最大100倍のズームを実現しています。
レビュー時には主に建物や遠くの標識にズームしてみましたが、10倍を超えると大幅に画質が低下する傾向がみられます。また、ズーム時には小さな手ブレで大きくフォーカス位置が変わるため、特に100倍のような高倍率では三脚なしで正確に狙うのは至難の業です。唯一の救いはズーム時に全体と写している部分が分かる小さいガイドが入ったフレームがでることでしょう。そうこうして頑張って撮った高倍率ズーム写真も、10倍を超えるとノイズだらけでぐちゃぐちゃした出来の悪い絵画のような写りになってしまいます。
▲S20 Ultraのズーム作例また、スマホで高倍率カメラを実装することは、盗撮の道具として悪用されてしまうのではないかという議論もあります。正直に認めましょう。高倍率ズームには少々薄気味悪さを覚えました。一度、アパートの前の歩道を歩きながら電話している女性にフォーカスを定めてみました。すると彼女の顔は、わずか10倍ほどのズームで画面全体を埋め尽くしました。目視では顔も見えない距離であるのも関わらず、スマホに写るプレビューを通じて、彼女の視線も感じます。不快に感じてすぐにスマホを置きました。スペースズームのようなスマホでの高倍率ズームには倫理的な問題をはらむ余地があります。サムスンがUnpackedイベントで紹介した例のように、誰もが遠くからの観光スポットにズームインするだけに使うと信じているなら、それは甘いと考えます。このスマホを手にした人が悪用しないかどうかは、その人の良識に頼るしかありません。
▲10倍ズーム話題を変えましょう。S20シリーズにはカメラをさらに楽しくする新機能「シングルテイク」モードも搭載されています。このモードでシャッターボタンを押すと、最大10秒間、すべてのカメラが同時に動作して、さまざまな写真とビデオを記録します。撮影時はスマホを構え続けている必要があり、時には構図をアドバイスするガイドが表示されることもあるかもしれません。こうして数秒間の撮影が終わったら、10個前後のオススメの写真と動画ができあがっています。
シングルテイクで撮れる写真や動画には、白黒バージョンやチープなサウンドトラックで飾られたループビデオなど、これまでのカメラ機能ではなかったようなバリエーションも用意されています。ただし、この機能は動きがある被写体にこそふさわしいものですが、そうしたものを撮る機会が少ないとあまり意味を見いだせないかもしれません。たとえば赤ちゃんを撮る親ならば、シングルテイクを楽しく使えるでしょう。S20 Ultraはインカメラも40メガピクセルと高解像です。自撮りすると顔の傷跡から眉毛の抜け毛までシャープに描写してしまうのではないかと心配しましたが、初期設定では約6.5メガピクセルで保存されます。40メガピクセル記録を有効にしたときも、ビューティーモードがあるため心配には及びません。ただ、髪の毛一本一本まで描写されるセルフィーは驚きのひと言でした。ここまでシャープんあ自分撮りをしたいと思っている人は多くはないでしょう。とはいえ、どちらの解像度を選んでも正確な色味で写り、便利に使えるインカメラであることは間違いありません。ただし、高解像度の写真はストレージ容量を圧迫する点には注意が必要です。検証で大量に写真を撮ったことで、ストレージ容量をかなり使ってしまい、すぐに警告が出てしまいました。ストレージを圧迫するという点では、背面カメラの1億画素写真も同様です。
■鮮明でスムーズな動画
もう1つのGalaxy S20シリーズの特徴「8Kビデオ録画」が便利な機能だとは思いませんでした。スペースズームのように、これは差サムスンが「印象的な新技術だ!」とアピールするために存在する機能です。S20シリーズが搭載する強力なチップセットSnapdragon 865のおかげで、十分なストレージとバッテリーの残量がある限り、超高解像度な映像を記録しつづけられます。ただしこれは多少の負荷がかかります。ニューヨークの街並みを8Kで撮っていると、1分ほどでスマホがほんのり温かくなってきました。
8Kビデオの問題は、撮ることではなく再生することです。S20 UltraのディスプレイはQHD+で、8Kをフル解像度で再生するには足りません。サムスンが用意したのは、8Kテレビに動画を簡単に転送する仕組みでした。ただしこの8Kテレビは、野生のパンダぐらい珍しいモデルです。YouTubeに8K解像度のままアップロードすることもできますが、この品質を評価するためには、やはり8Kのディスプレイを用意する必要があるでしょう。一方で、動画撮影時の手ブレ補正ツールは十分に実用性の高い好ましいものでした。凹凸のある歩道を歩いていてつまずいた時でさえ、非常に滑らかな写りになります。他のレビューではビデオテスト中にフォーカスエラーやフレームドロップといったエラーも報告されていますが、筆者が試した限りではそういっった不具合には遭遇しませんでした。ただ、繰り返しになりますが8Kディスプレイを入手するのが困難なため、録画したビデオを8Kで再生するのは叶いませんでした。
■なめらか表示の120Hz駆動ディスプレイ
S20 Ultraで8Kビデオを見るのは馬鹿げたことですが、それでも6.9インチの有機EKディスプレイは素敵なキャンバスです。表示輝度が高く、環境光にあわせて表示を調整するので、私がも撮影した街並みは日光の下でも鮮明でカラフルに見えました。友人が撮った4K HDRビデオやInstagramの投稿も、ほぼ前面全体を覆うディスプレイによって、より臨場感をもって体験できました。S20シリーズの見どころの1つが、これまでのスマホより高速に描画する120Hz駆動のディスプレイです。このフレームレート120Hz は、多くのAQUOSスマホのほか、ASUS ROG Phone II、Razer Phone 2など一部のゲーミングフォンが搭載するにとどまっています。Pixel 4が90Hzディスプレイを搭載するなど、ハイフレームレートは注目されつつもありますが、普及している機能ではありません。
ここで注意が必要なのは、S20 Ultraの120Hz駆動はフル解像度で適用できないということです。120Hz駆動時は画面解像度がフルHD(1080p)に制限されます。1440p解像度で表示したいときは反対に、フレームレートが60Hz以上に上げられない仕様です。120Hzのフレームレートは、ゲームや動画などを表示すると動きが滑らかに見えますが、それだけではありません。もう1つのメリットはあらゆるスクロールの動きが滑らかになることです。InstagramやTwitterのフィードでも、Redditのような掲示板でも、スマホではあらゆる場所でスクロールが必要となるので、そこでストレスを感じない表示になるのは、大きな改善につながります。ただし、スクロールのなめらかさについては、筆者にとってはPixel 4の90Hz駆動でも十分な改善効果がありました。
■2020年レベルの5G
高速といえば、S20シリーズは5Gでサブ6とミリ波の両方をサポートします(標準モデルのGalaxy S20はサブ6のみ対応)。特に後者のミリ波帯は大幅な速度向上が期待される周波数帯です。ただし、ミリ波は障害物に弱く、たとえば手がアンテナを覆っているとつながらなくなるとも言われています。その点については不安を抱えつつ検証しました。ミリ波帯通信の信頼性を高めるために、5Gではビームフォーミングやビームトラッキングといった技術が使われていますが、ニューヨークで試した限りにおいてはミリ波通信をさえぎるのはたやすいことでした。レビュー機ではミリ波のみの5Gを構築しているVerizonのモバイル通信が使われていました。この超高速ネットワークはかなりエリアが限られていて、超高速な通信を試すために、マップ上から基地局を探し出して、視界に入る範囲までわざわざ出向く必要がありました。
Verizonのスマートフォンでは、ネットワーク上で実際に5Gミリ波通信が行われている場合にのみ、「5G UWB」アイコンが表示されます。ブルックリン区の基地局周辺を歩いてみると、5GUWBとLTEがコロコロ切り替わるような状況でした。しかし、なんとか5Gにつなげると、その高速さは確かなものでした。Speedtestアプリによると、下り速度は実測で最高800Mbpsに達しました。4G LTEでダウンロードに13分かかった4Kビデオが、5Gではわずか13秒で完了しました。一方、上り通信は約50Mbpsにとどまっていました。これは、Verizonがアップロードにミリ波帯を利用せず、すべて4G LTEで行っているからです。つまり、Instagram StoriesやYouTubeの動画アップしようとしても、これ以上速くなることはありません(あくまでVerizonの場合は)。
※5Gについての参考記事:5Gではどうして通信が速くなる? 仕組みから探る可能性と限界
■電池持ちとパフォーマンス
ミリ波5Gや120Hz駆動のディスプレイには、電池持ちを縮めてしまう懸念があります。その不安を和らげるために、サムスンはなんと5000mAhのバッテリーセルをS20 Ultraに詰め込んでいます。
レビューではS20 Ultraで画面を120Hzに設定して、大量の写真を撮ってInstagramを閲覧し、膨大なメッセージのやりとりも行っています。この使い方で、バッテリーは1日半は保ちました。条件を統一したバッテリーテストでは、11時間半の電池持ちを記録しています。これは、Pixel 4 XLよりも短いものですが、Galaxy S10+とは同等レベル。iPhone 11 Pro Maxよりも電池持ちでは優れていると言えるでしょう。
S20 Ultraは、クアルコムの現世代で最高峰チップセットSnapdragon 865を搭載しています。メッセージやInstagram、Twitterなどをこまめに切り替えつつ、大量の写真やビデオを撮影するなかでも、このチップセットは良好なパフォーマンスを維持し続けました。ただし、ビデオの録画後の保存中にカメラモードの切り替えを行ったときに、一度だけフリーズしています。それ以外に動作面での問題はなく、画面録画をしながら『Call Of Duty Mobile』をプレイして、その録画映像をすぐに編集しようとしても、すべてを問題なく処理できていました。
Galaxy Sシリーズのフラッグシップモデルだけに、超音波式のディスプレイ内指紋センサー、ワイヤレスパワーシェア(Qi製品へスマホから充電)、Bixby ルーチンなどのこれまでに搭載されてきた機能も抑えています。
■結論
Galaxy S20 Ultraは、1億画素カメラ、100倍ズーム、8Kビデオ、120Hz ディスプレイ、5G対応など、大きな数字を誇る機能を揃えた意欲的なデバイスです。今日のスマートフォンカメラ、ディスプレイ、モバイルネットワークで得られる最高の仕様が盛り込まれています。そして、(カメラは別として)最高なものを手に入れることだけに熱心な人にとっては、S20 Ultraは優れたデバイスと言えるでしょう。
一方で、無視できないほどの大きな数字があります。1400ドル(約15万円)という価格です。折りたたみ画面"フォルダブル"の有機ELディスプレイを用いた先駆的なモデル Galaxy Z Flipよりも高価な設定になっています。この価格帯なら、サムスンはすべての機能で完璧に近いものを提供する必要がありますが、S20 Ultraはそうではありません。そのカメラの不備と重さは、市場では最高の製品であるという立ち位置を揺るがします。最先端のスマートフォンが必要ない人にとって、S20 Ultraはあきらかにオーバースペックです。S20またはS20+で不十分なシーンを想像するのは困難です。単に最高のスペックを得るだけで満足するなら、S20 Ultraはピッタリな選択肢でしょう。
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