アップルが半導体ファウンダリ(受託製造)世界最大手TSMCにとって第1の顧客であることは、たびたびお伝えしてきたことです。そんななかインテルがTSMCとの取引額を増やし、2023年には全顧客のうちトップ3になることを目指しているとのウワサが報じられています。
TSMCがアップルを特別扱いしていることは、何度も報じられてきました。たとえば全世界的な半導体不足のなか、TSMCは他の顧客に対してチップ製造価格を最大20%値上げした一方で、iPhoneに搭載されるAシリーズチップはわずか3%しか上げなかったというぐあいです。
さて台湾の業界情報誌DigiTimesは、TSMCの売上に占める顧客ランキングを公開しています。それによると、アップルとの取引額は25.93%にも上るとのこと。昨年(2020年)TSMCの売上高は455億1000万(約5兆2000億円)ドルのため、アップルのシェアは(約1兆3000億円)という計算です。第2位はMediaTekで5.8%、続く第3位はAMDの4.4%となっています。
そしてインテルも顧客リストにありますが、0.84%に過ぎません。同社は自前の技術ではプロセスルール(チップの最小加工寸法)の微細化が遅れており、第14世代Coreプロセッサ「Metor Lake」を予定通り2023年に投入するにはTSMCに頼らざるを得ないとみられています。
が、この取引額の少なさでは、インテルがTSMCに最先端の3nm製造ラインを割り当ててもらえる可能性は低いはず。そのため同社は「アップルと3nmプロセス製造での衝突を避けるため」TSMCと協議を予定しているとの噂がありましたが、その後、実際にパット・ゲルシンガーCEOが13日夜に台湾を訪問するとの声明を出しています。
DigiTimesによると、ゲルシンガー氏はTSMC社長や幹部らと会い、3nm製造ラインだけでなく、将来の大規模な注文契約も視野に入れた協力を交渉するとのこと。両社は少なくとも2025年以降の2nmまで提携する予定であり、2023年以降はインテルがTSMCにとってトップ3の顧客となることが期待されているとの業界関係者の証言が伝えられています。
そこまで踏み込んだ協力が前提であれば、インテルへの3nmチップ製造ライン割当てもがぜん信ぴょう性が増してくると思われます。
かたやゲルシンガー氏は「台湾は地政学的に不安定」と述べて米国内に半導体工場を建設する必要(そのために米政府から補助金を引き出す狙いが憶測された)を訴えるなど、TSMCをけん制する発言が物議を醸したこともありました。協力関係にもライバル関係にもあるインテルとTSMCの駆け引きに、今後も注目したいところです。
Source:DigiTimes
via:PhoneArena