(イラスト/よこいしょうこ)
嫌がらせやセクハラをしてくる義父から家族を守りたい――。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。相談者の義父は、親族一のトラブルメーカーで、夫の家族を苦しめてきました。借金を繰り返し、返済ができなくなると息子である夫に泣きついてきます。そこで相談者の意向を理由に「出せないことを伝えると、そんな嫁をコントロールできないでどうするんだ!別れろ!と怒鳴って夫を追い詰めます」。相談者に対しても、「嫌がらせの手紙が送られてきたり、旦那が出世できないのは私がダメな嫁だと、親戚中に言いふらします。怒鳴ったり、平気で人を殴ります」といい、夫の妹が全治一カ月もの怪我を負わされる事件もありました。そのため、相談者や夫の家族たちは精神的に追い詰められ、心療内科に通っています。そんな義父が最近、がんと診断され、「みてもらえる人がいなくて困ったのか、我が家に急に来ると言い出しました。断ると、なにがなんでも行ってやると言って脅してきます」。相談者はどんな対応ができるのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。●「同居は拒否できます」まず、相談者や夫は、義父からの同居を拒否することが可能です。この点、民法で直系血族間に扶養義務が課されていること(877条1項)との関係が問題になりますが、扶養義務は、資力が乏しい親族に対する経済的な支援の義務を指すものであり、同居することまで求められるわけではありません(879条参照)。無理やり押しかけてくる義父に対して何らかの法的措置がとれないかも問題となります。この点、まずDV防止法を思い浮かべる方が多いかと思いますが、DV防止法の対象は配偶者からの暴力であり、親子間は含まないので、今回のケースでは適用がありません。ですが、民事保全法の接近禁止仮処分の申立の対象とはなります。もっとも、仮処分が認められるのは、押しかけられてきて身の危険を感じるような緊急性の高いケースですので、直近で重度の暴力を受けていないような場合には、申立しても認められない可能性が高いでしょう。しかし、できることもあります。矛盾するようですが、このようなケースで一番大切なのは、「相手にしないこと」です。電話に出ない。着信拒否にする。訪ねてきても応対しない。相手が家の鍵を持っている場合には鍵を変える。このような自衛措置が一番重要です。相手にしてもらえると思っているから、傍若無人な態度に出るのです。仮に義父が押しかけてきて家の前で騒いだりするような場合には警察を呼んで対応してもらいましょう。【取材協力弁護士】寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士2007年弁護士登録。東京弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)を経て、2014年10月開業。2018年11月から弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)。刑事事件、離婚事件、不当請求事件などを得意としています。事務所名:北千住パブリック法律事務所事務所URL:http://www.kp-law.jp/
弁護士ドットコムニュース編集部