国内で流通しているスマートフォンのメーカーと言えば、米アップルが過半のシェアを握り、残りを韓国サムソンや中国ファーウェイなどのアジア勢、ソニーやシャープといった日本勢で奪い合う構図だ。
採算が合わずに撤退する日本メーカーが相次ぐなか、あえて新興家電メーカーのバルミューダが新たに参入した。そのデザインや機能を巡ってインターネット上で早くも賛否が分かれている。果たして勝算はあるのか――。
「現在のスマートフォンがあまりにも画一的になっている」――。バルミューダがスマホに参入したきっかけは、寺尾玄社長のこうした疑問だった。
2021年11月16日に発表した同社として初めてのスマホ「バルミューダフォン」は、基本ソフト(OS)にアンドロイドを搭載し、通信規格は「5G」に対応。予定管理などの基本アプリやホーム画面はカスタマイズが加えられている。バルミューダは企画・デザインを手掛け、生産は京セラに委託した。販売は自社のオンラインストアや直営店で行うほか、携帯電話会社では、ソフトバンクが取り扱う。
特徴的なのはデザインだ。4.9インチの画面は現在のスマホの中では小ぶりだが、持ちやすいサイズを優先した。背面が湾曲しているのも、自然に手になじむ形状を目指したため。正面から見ても形状が緩やかなカーブを描いており、「一か所も直線を含まない唯一のスマートフォン」とPRしている。
このデザインを手掛けたのは、代表取締役社長兼チーフデザイナーである寺尾氏。1973年生まれの寺尾氏の経歴は異色だ。高校中退後、地中海沿岸の国々を約1年間にわたって放浪した。帰国してからはミュージシャンとして活動し、ロックスターを目指していた。
そんな日々の中で、米アップルの共同設立者の一人であり、デザイナーでもあったスティーブ・ジョブズらパソコン創世記に活躍した人物を描いた著作を読み漁り、20代後半でものづくりの世界に転身した。2003年に前身のバルミューダデザインを創業し、2020年には東証マザーズ上場を果たした。