パワフルかつ手ごろな価格のIT管理ソフトウェアベンダーとして知られる米国ソーラーウインズ(SolarWinds)。2019年5月には日本法人のカントリーマネージャーとして河村浩明氏が就任。新しいリーダーを迎えたソーラーウインズは、IT管理ソリューションの日本市場におけるブランド力をさらに高める方針だ。現在はエンジニア、営業、マーケティングなど多様な人材を採用し、人員も順調に拡大中である。
これまでシマンテックやDropboxなどの日本法人でカントリーマネージャーを務めてきた河村氏は、ソーラーウインズの「顧客企業の現場エンジニアに寄り添う」地道なスタンスに驚いたという。同社のミッションや日本市場における戦略について、河村氏に詳しく聞いた。
ソーラーウインズ ジャパンカントリーマネージャーの河村浩明氏
――まずは、ソーラーウインズがどんな会社なのかを簡単に紹介してください。
河村氏:ソーラーウインズは、現場のITプロのために「ITをより簡単にすること」に注力している会社です。具体的に言えば、ITプロフェッショナルが自らの抱える課題に対して簡単に対応できるよう、充実したIT管理ツールと技術を提供しています。
1999年の設立から20年間、ソーラーウインズはITプロフェッショナルを支援することで成長し、ブランドを拡大してきました。弊社の製品を利用することで、世界中の組織はその業種や規模、複雑さに関係なく、オンプレミス/クラウド/ハイブリッドといういずれのITモデルにおいても、ITサービスやインフラストラクチャ、アプリケーションの監視と管理を行えるようになります。そして、これらの製品群は「Orion®(オライオン)プラットフォーム」を通じて統合されており、全社のITインフラをひとつの画面で可視化/管理できる仕組みになっています。
現在、ソーラーウインズ製品を導入している企業は世界190か国/地域のおよそ32万社に及び、「Fortune 500」の499社を含む大企業から中小企業までと、あらゆる規模の企業でご利用いただいています。さらに、IDC®の調査では「ネットワーク管理ソフトウェア市場のリーダー」と評されています。
ソーラーウインズのWebサイト(https://www.solarwinds.com/ja)
「Orion(オライオン)プラットフォーム」のダッシュボード画面
――すでに多くの顧客実績があるのですね。ユーザー企業がソーラーウインズ製品を支持する理由はどこにあると考えていますか。
河村氏:ソーラーウインズは設立から20年間、一貫してITプロフェッショナルに寄り添い、彼らの課題やそれをどう解決したいかを理解しようと努めてきました。そもそも、現場のネットワークエンジニアが「自分たちに役立つツールを開発しよう」と始めた会社ですから、「現場の声に耳を傾け、現場の苦労に寄り添うこと」をとても重要視しています。
われわれのビジネスは徹頭徹尾、ITプロフェッショナルが現在抱えている問題を深く理解し、その問題に対処することで成り立っています。だからこそ、IT管理の課題を解決するためのツールとして、自信を持ってソーラーウインズ製品を提供できます。わたし自身も、そうした姿勢がソーラーウインズの一番気に入っている部分です。
わたしはこれまでさまざまな会社でマネジメント職を務めてきましたが、現場の意見を吸い上げることで“今”が見えたり、良いアイディアが生まれたりすることは多くありました。最近ではトップダウン型ではなく“文鎮型”のフラットな組織に注目が集まっていますが、それもやはり、専門性を持つ現場の人の視点からこそ、新たな課題解決策やアイディアが生まれる時代だからでしょう。ソーラーウインズは、お客様との間でそれを実践してきた会社だと言えます。
――過去数年間で、ソーラーウインズは製品領域や製品ポートフォリオをずいぶん拡充しています。これもやはり「現場の声」に基づいて、ユーザードリブンで取り組んできた結果でしょうか。
河村氏:そうですね。ソーラーウインズでは積極的にお客様の声に耳を傾け、そこでうかがったさまざまな現場課題やフィードバックに基づいて、新しいツールや機能の開発を進めてきました。製品領域やポートフォリオが拡大したのは、あくまでもお客様の声にひとつずつ応えてきた“結果”に過ぎません。
ちなみに、クラウドなどの新領域に進出する際には、自社開発にこだわらず企業買収も柔軟に検討してポートフォリオの拡充を図っています。たとえば昨年買収したVividCortexは、クラウドデータベース専用のパフォーマンス監視製品を開発していました。その製品は現在「Database Performance Monitor」として提供開始しており、いずれはOrionプラットフォームにも統合していく計画です。
ソーラーウインズでは現在、55以上の製品群をラインアップ。ハイブリッド/マルチクラウド環境におけるアプリケーション/サーバー/データ/インフラストラクチャ/ネットワークの監視や管理、保護といったIT運用管理(ITOM)の課題解決に必要なものをすべてカバーしている
「Database Performance Monitor」のダッシュボード画面
――「現場の声を聞く」ために、日本法人では具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。
河村氏:毎日数社ずつ、巡回でお客様にお電話したり訪問したりと、そこはとても愚直にやっていますよ。お客様先に弊社のエンジニアと一緒に出向くこともあれば、わたしだけが訪問して、エンジニアにはPCからリモート参加してもらうこともあります。
――カントリーマネージャーの河村さんが客先に足を運んで、エンジニアの方がオフィスからリモート参加するというのは、ちょっと面白い構図ですね(笑)。
河村氏:技術のわかっている現場のお客様にとっては、わたしのような営業畑の人間よりもエンジニアのほうが話も通じるし、信頼できるでしょうから(笑)。
特に日本のお客様の場合、われわれのような外資系ITベンダーと付き合ううえでは「日本国内にもしっかりとエンジニアを置いているかどうか」を見られます。つまり、日本法人にも技術サポートやコンサルティングの能力が備わっていないと、取引先として信頼していただけません。そこで弊社では、テクニカルエンジニアによる技術面でのサポートを充実させています。
また製品導入後もお客様をしっかりとサポートして、できるだけ長いお付き合いができるように努めています。たとえば、保守契約を結んでいただいたお客様には、日本語による技術サポートだけでなく無償トレーニングも提供できます。せっかく豊富な機能を備える製品をご導入いただいても、実際にはごく一部の機能しか使っていないお客様もおられます。トレーニングでさまざまな機能をご紹介し、製品を十分に使い切っていただくことで、長いお付き合いにつながるものと考えています。
昨年末からはウェビナー(Webセミナー)の提供も始めました。ソーラーウインズのテクニカルトレーナーやセールスエンジニア、製品マーケティングの担当が最新の製品やソリューション、活用事例などを解説する内容で、定期的に実施しています。ここには、製品導入済みのお客様も導入検討中のお客様も参加され、好評いただいております。
――ユーザーの声を聞くという面では、ソーラーウインズには大きなオンラインコミュニティもありますね。
河村氏:はい。オンラインコミュニティの「THWACK(スワック)」には、グローバルで15万人以上のエンジニアが参加しています。さまざまな課題を抱えたユーザー企業の現場エンジニアの方々が自由に意見を交わし、製品へのフィードバックも行っています。もちろんソーラーウインズのエンジニアも積極的に参加して、技術的なアドバイスを行うとともに、貴重なお客様の声に耳を傾けています。こうした場があるのは、弊社にとって大きな武器になっていますね。
――さまざまなソリューションをラインアップしている中で、現在特にニーズが高いものはありますか?
河村氏:そもそもお客様からの引き合いが強いものを製品化しているので、ニーズが高いと言うと“すべて”なのですが……(笑)。強いて挙げるならば、「自動管理」や「可視化」「相関分析」などの課題を感じているお客様が多いことから、現在は運用管理ツールのプラットフォーム化に対するニーズが高いと思います。
個別の領域に対応するバラバラのツールを使って、マニュアル(手作業)でITインフラを運用するという旧来のスタイルは、すでに限界が来ています。もちろん、だからと言って、すべての管理ツールを一気にソーラーウインズ製品に置き換えていただくのは難しい。そこで、まずはクリティカルな部分から導入してもらい、そこから段階的に置き換えを進めて、最終的には効率の良い統合プラットフォームを構築するという方法をお勧めしています。
ソーラーウインズでは手ごろな価格設定をしています。きめ細かな価格体系を通じて最小構成で数十万円から製品を導入できます。いきなり数千万、数億円の投資が必要になるわけではないので、IT予算が潤沢ではない企業でも稟議への承認が得やすいのではないでしょうか。まずはスモールスタートして、導入効果を実証しながら少しずつ統合管理環境を整えていける点は大きな強みだと思います。
――たしかに、IT環境の複雑化やIT人材の不足を背景として、運用管理の効率化や自動化を求める声は高まっています。また、社内外からの脅威に対しても効果的に対処するためのテクノロジーも必要です。導入や管理が簡単にできるソリューションのすべてが、パワフルかつ手頃な価格で、なおかつツール間連携や簡素化もできるプラットフォームとして提供されるというのは、ITやセキュリティを担当する「現場」にとってうれしいことですね。
河村氏:IT環境の複雑化といえば、「クラウドやハイブリッドITへの対応」も大きな課題となってきています。オンプレミス環境とは異なり、クラウドやハイブリッドIT環境は複雑ですから。
たとえば、業務で利用しているSaaSにアクセスできなくなった場合、原因がサービス事業者のクラウドインフラにあるのか、通信事業者にあるのか、はたまた社内ネットワークやPCにあるのか、予想される問題箇所はいくつも存在し、障害切り分けは簡単ではありません。また昨今では、ハイブリッドITを採用することで、ITインフラストラクチャ自体が複雑化しています。クラウド環境とオンプレミス環境を一元的に可視化し、問題箇所をすばやく特定できるようにすることが、今の現場では大きなチャレンジになっています。
もうひとつ、顧客企業では「固定費の削減」も課題になっています。あらゆる業界の企業がデジタルトランスフォーメーションに向かう現在、テクノロジーを活用して固定費を削減し、事業や製品の新規創造に戦略投資したいと考える企業は増えています。ITそのものについても同じで、保守運用にかかるコストを削減して、戦略的なIT投資に回すという考え方が日本でも本格化してきました。
こうした課題は、ソーラーウインズの製品群で解決していけます。オンプレミスとクラウドの両方を透過的に監視/管理できるほか、サービスデスクなどのITサービス管理周りの製品も充実しています。またIT運用管理にかかる固定費も、大幅に削減できるという実績があります。現場でそうしたご評価をいただき、最近は金融関係や公共系のお客様など、大型の引き合いも増えていてうれしく思っています。
――ソーラーウインズの国内向けビジネス戦略において、海外市場と異なる点はありますか。
河村氏:欧米の場合は、お客様自身が弊社のWebサイトからトライアル版製品をダウンロードし、それがきっかけで受注に至るケースが多いのですが、日本の場合は必ずしもそうではありません。まずは社内稟議を上げて上長の理解を得るといったステップも挟みますから、ホワイトペーパーなどを通じて、ソーラーウインズ側からの情報発信を地道に強化していく必要があると考えています。
ソーラーウインズは、日本に対して非常に積極的な計画をもっています。拡大中の日本チームもIT管理ソリューションの主要プレイヤーとして、日本でのブランド力や市場の立ち位置を強化できるよう全力で進んでいます。
そもそもソーラーウインズの経営スタイル自体が、「ドカンと投資して一気にトップシェアを取る」「1年で一気に成長する」といった短期目標を追うものではなく、地道な努力を積み重ね、時間をかけてシェアを獲得していくというものなのです。外資系ITベンダーとしては極めて珍しいと思いますが、こうしたソーラーウインズのスタンスを日本のお客様にもぜひ知っていただきたいですね。
――日本市場への展開では販売パートナーとの関係も重要です。パートナー戦略はどのように考えていますか。
河村氏:ソーラーウインズは、ディストリビューター、リセラー、サービスプロバイダーやインテグレーターといった、業界をリードするテクノロジー企業と緊密に連携しています。チャネルパートナーは市場開拓を図るうえで非常に重要な要素です。我々はパートナーを、営業チームの一員と考えていますし、卓越したパフォーマンスのおかげでビジネスを成長させることができています。
そのため、パートナーが最高のリソースや継続的なトレーニング受けられるよう環境を整えています。自社の営業部隊を支援するのと同じように、トレーニングやマーケティングなどチャネルパートナーへの支援も行っています。
トレーニングについては、ソーラーウインズ認定プロフェッショナルのブートキャンプやソーラーウインズセールスエキスパート認定セッションなどを提供していますが、参加されるパートナーからは毎回そのレベルの高さに驚かれます。
こちらも地道な努力を積み重ねることが大切です。顧客企業のエンジニアと同じように、パートナー企業の担当者も現場では「苦労」されています。まずはソーラーウインズと共に小さな成功体験を積み重ね、「今後もソーラーウインズ製品を扱いたい」と思っていただければ、ほかの顧客企業にも自信を持って勧められるでしょう。
実際にある販売パートナーの担当者が、これまでとは違う業界担当に異動した直後に「ソーラーウインズ製品を提案したいから、一緒に説明に来てほしい」と連絡をくれたこともありました。現場の人が本当に「売りたい」と惚れ込んでもらえる製品を提供できるのはうれしいことですし、その自信もあります。
――米国など海外市場ではMSPパートナー経由でのマネージドサービスも提供されていますが、日本ではどうでしょうか。
河村氏:社内にIT専任担当者のいない中小企業などでは、運用管理の手間がかからないマネージドサービスを利用したいというニーズも高いですね。米国市場などでのMSP販売は堅調に伸びており、日本国内でもサービス提供に向けて準備を進めています。ここはぜひ期待しておいてください。
――最後に、これまで豊富なマネジメント経験を持つ河村さんがソーラーウインズについて感じること、そして今後の方向性についてお聞かせください。
河村氏:ソーラーウインズのカントリーマネージャーに就任して強く感じるのは、「現場の声を重視する」という精神が、製品開発から営業までとにかく徹底されていることです。その徹底ぶりには驚かされましたが、同時にそれがお客様からの厚い信頼につながっていることも実感しています。
日本市場ではまだ知名度が高いとは言えないソーラーウインズですが、そうした良さを生かしながら、より多くの企業に弊社のソリューションを知っていただきたいと思っています。まずは、これまで以上に多くの現場エンジニアの方にお会いして、「現場の声」を聞きたいですね。今後も、お客様にとって価値あるパートナーとして認識していただけるよう努めてまいります。
(提供:ソーラーウインズ)