貿易協議をめぐりアメリカとの緊張が高まる中、中国の文化観光省は4日、国民に対し、「発砲事件」が立て続けに発生しているアメリカへの渡航について「リスクを十分に見極める」よう呼びかけた。国営メディアが報じた。
同省は、強盗や銃犯罪に巻き込まれる危険があるとして、注意を喚起した。
中国外務省もまた、アメリカは入国審査などで同国民を尋問し、「嫌がらせ」をしていると主張した。
中国とアメリカは、貿易協議をめぐって闘争を繰り広げている。
先月10日にアメリカが2000億ドル(約22兆2000億円)相当の中国からの輸入品に対する関税率を10%から25%に引き上げたことで、貿易戦争が再燃した。
また、米商務省が先月15日、安全保障上の懸念がある外国企業のリストに中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を追加し、両国の対立が拡大した。
世界トップの経済大国であるアメリカと中国は昨年、互いの輸入品に対し数十億ドル相当の関税を課す報復合戦を繰り広げ、貿易を混乱させ、世界経済を圧迫した。
ロイター通信によると、国営の中国中央テレビは、「アメリカでは最近、銃撃や強盗、窃盗事件が頻発している。文化観光省は、中国人観光客に対し、アメリカに旅行するリスクを十分見極めるよう呼びかけている」と伝えた。
外務省の耿爽報道官は4日の記者会見で、注意喚起は「現状を踏まえると必要なこと」だと述べた。
「しばらく前から、アメリカは出入国審査や職務質問といったかたちで中国人を尋問し、嫌がらせをしている。したがって、安全意識を高めるために、文化観光省は観光面の注意喚起を通知したほか、外務省や在米中国大使館と領事館は安全面の注意喚起を通知する決定を下した。これは、責任のある政府がすべきことだと私は考える」
米国は、不公正な貿易慣行を押し付けているとして中国を非難しているほか、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が米国家安全保障に危険を及ぼしていると主張している。
これに反論している中国は、次第に、アメリカによる制裁措置は、中国の高まる国際的影響力を阻止しようとするものだとみなすようになった。
世界トップの経済大国であるアメリカと中国による貿易戦争は、両国で合意がまとまり、まもなく終わりを迎えるとみられていた。
しかし、交渉が続く中でトランプ政権は、中国が両国間での合意文書を本質的に変更しようとしたとして非難し、5月10日には2000億ドル相当の中国からの輸入品に対する関税率を現行の10%から25%に引き上げた。
5月15日には米商務省が安全保障上の懸念がある外国企業のリストにファーウェイを追加。同社が米国企業の技術を政府の許可なく入手するのを禁止した。
この報復として、中国は6月1日から600億ドル(約6兆6000億円)相当のアメリカからの輸入品への関税率を最大25%に引き上げた。
現時点では公式協議は1つも予定されていないが、6月28日から大阪で開かれる主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が会談を行なうとみられている。
一方、アナリストは行き詰まり打開の見通しについて、とりわけ米中が互いに責任をなすりつけ合って以降、楽観視はしていない。
(英語記事 China issues US travel warning over 'shootings')
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