Engadget Logo エンガジェット日本版 Honorも手放し危機的状況のファーウェイ、命運を握る米新政権(佐野正弘)

書かれた 沿って mobilephonebrand

国内で携帯電話と政治といえば菅政権の携帯料金引き下げが大きな関心を寄せている最中ですが、海外に目を移すとやはり話題となっているのは、米国から制裁を受けている中国のファーウェイ・テクノロジーズの動向ではないでしょうか。

同社に対する米国の制裁が本格化したのは2019年からで、米国企業との取引が制限されたことでグーグルの「Googleモバイルサービス」(GMS)を自社スマートフォンにインストールできなくなってしまいましたが、その制裁を受けてもなお、お膝元の中国を中心に同社のスマートフォン販売の勢いが衰えなかったことから、米国は一層制裁を強めることとなります。

ファーウェイ・テクノロジーズが制裁を受けてもなおスマートフォンを供給できたのは、傘下のハイシリコン・テクノロジーが開発した独自のチップセット「Kirin」シリーズの存在があったため。そこで米国は2020年に入り、Kirinに目を付けて相次ぎ制裁を打ち出してきたのです。

実際、2020年5月には米国の技術を使って製造した半導体を同社に輸出を禁止することで、台湾企業が製造していたKirinの製造をできなくしています。さらに2020年8月には、同じく米国の技術を使って製造した半導体を同社に供給することを禁止し、他の米国外企業からチップセットを調達することも困難にしてしまいました。

その結果、ファーウェイ・テクノロジーズはチップセット調達そのものの道が断たれてしまい、いよいよスマートフォンの製造・開発が困難となってしまいました。ですがそれでも同社は新しいスマートフォンを提供する道を諦めず、2020年10月22日には最新のフラッグシップモデル「HUAWEI Mate 40」シリーズ3機種を発表しています。

中でも最上位モデルとなる「Mate 40 Pro+」は、5000万画素のカメラや光学10倍相当の800万画素カメラなど、5つのカメラを搭載した非常に高い性能を持つスマートフォンとして注目されましが、一方で同社のコンシューマー・ビジネス・グループCEOであるリチャード・ユー氏は、その発表会の場で米国の制裁によって同社が非常に難しい状況にあることも訴えています。

実際、HUAWEI Mate 40シリーズに搭載されている最新のチップセット「Kirin 9000」「Kirin 9000E」は、先の米国の制裁によって2020年9月15日以降製造できなくなっています。それゆえ同社は手持ちの在庫だけでスマートフォンを作らなくてはならず、HUAWEI Mate 40シリーズの供給数が不安視されているのも事実です。

それを示す事例として挙げられるのが日本市場の動向です。ファーウェイ・テクノロジーズの日本法人であるファーウェイ・ジャパンは、2020年11月17日に日本向けの新製品発表会を実施していますが、そこで発表されたのはノートパソコン「HUAWEI MateBook」シリーズの最新機種や、ワイヤレスイヤホンの「FreeBuds Pro」など。HUAWEI Mate 40シリーズなどスマートフォン新機種の姿はありませんでした。

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なぜかといえば、やはりチップセットなどの半導体在庫に限りがある同社としては中国など重点市場に絞って端末供給をせざるを得ず、シェアが小さい日本向けの新機種の投入が見送られたのではないかと考えられます。

そうした厳しい在庫状況もあり、ファーウェイ・テクノロジーズはついに1つの大きな判断も下したようです。それは2020年11月17日に、同社のスマートフォンブランドの1つ「Honor」の事業を、Shenzhen Zhixin New Information Technologyという中国企業に売却すると発表したことです。

Honorブランドは日本では展開されていませんが、中国などでは低価格で高い性能を持つスマートフォンを提供する人気ブランドとなっています。各種報道によると、Honorブランドはファーウェイ・テクノロジーズのスマートフォン出荷台数のうちおよそ4分の1を占める規模とのことで、同社が世界1、2を争うシェアを獲得していることを考えると無視できない規模であることは確かでしょう。

ですがファーウェイ・テクノロジーズは、半導体の在庫を考えればメインブランドである「HUAWEI」ブランドの端末供給を維持するのに手いっぱいで、Honorブランドにまで手が回らなくなってきているといえます。ただHonorブランドをそのまま終了させるには規模が大きく、サプライチェーンに与える影響も大きいことから、売却して独立させる道を選んだといえそうです。

ソフトウェアの面では独自のエコシステム「HUAWEI Mobile Services」や、独自OSの「Harmony OS」などを開発して米国に依存しない体制構築を進めてきたファーウェイ・テクノロジーズですが、半導体に関しては現在のところ、中国の技術だけで米国の装置を使うのと同等の性能を持つものを製造するのが難しいようです。それだけに現状の制裁が続けば、いずれ在庫が尽きてスマートフォン事業を維持できなくなってしまうでしょう。

となると、やはり気になるのが米国の動向です。そもそもファーウェイ・テクノロジーズに対する制裁が急速に厳しくなったのは、現在の大統領である共和党のドナルド・トランプ氏が就任して以降のことでした。

トランプ政権下では米中対立が急速に強まり、中国企業やその関連企業に非常に厳しい制裁が科せられてきました。実際ファーウェイ・テクノロジーズだけでなく、やはり中国企業であるバイトダンスの傘下にある「TikTok」の運営企業にも制裁がかけられており、現在も存続が危ぶまれる状況が続いています。

ですが先日実施された米国の大統領選挙で、民主党のジョー・バイデン氏が実質的に勝利したとされており、バイデン氏の政権下になれば米国の政策が大きく変わるとも言われています。筆者は国際政治の専門家ではないのでどのような変化が起きるのか詳しいことは分かりませんが、仮にバイデン政権下で米中対立が緩和されたとなれば、ファーウェイ・テクノロジーズにかけられている一連の制裁も緩和される可能性が出てくるでしょう。

また2020年11月13日には、米国企業であるクアルコムがファーウェイ・テクノロジーズ向けに4G用半導体の販売許可がなされたとの報道がなされています。その具体的な内容は不明ですし、5Gが含まれていないようで全面的な緩和というわけではないのでしょうが、米国側の姿勢にやや変化が出てきた兆候と見ることもできるかもしれません。

米大統領選はまだ混乱が続いていることなどもあり、新政権の影響が本格的に出てくるのは2021年に入ってからと見られています。それだけに米国の姿勢がどのように変化し、それによってファーウェイ・テクノロジーズのスマートフォン事業が再び息を吹き返すのかどうかは、来年の大きな注目ポイントの1つとなりそうです。

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