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通信料、結局4割も下がってないのでは? スマホ業界2019年振り返り【業界動向編1】

書かれた 沿って mobilephonebrand

2019年も残りあとわずかになりましたが、今年も携帯電話業界では大きな出来事が目白押しでした。そうした携帯電話業界の1年間のトピックを、Q&A形式でわかりやすく解説していきましょう。まずはキャリアにまつわる業界動向編、その1(主に2019年前半のトピック)です。

トピック1:「スマホ4割値下げ発言」で何が変わった?

菅義偉官房長官が2018年に「携帯電話の料金は4割引き下げる余地がある」と発言したことが、大きな話題となりました。実質的にそれを受ける形で、2019年6月に総務省が有識者会議「モバイル市場の競争環境に関する研究会」を開催し、結果として2019年10月の電気通信事業法の改正につながりました。

改めて、改正電気通信事業法の内容を振り返ると、その目玉の1つは通信料金と端末代金を明確に分離した、分離プランの導入義務化です。総務省は、携帯電話会社が毎月の通信料を原資に、スマートフォンの大幅値下げに力を入れていることが通信料金が下がらない原因の1つとされ、分離プランを義務化することで端末代の大幅値引きをできなくしたワケです。

それに加えて改正法では、通信料金に紐づかない端末代の値引き上限も、一部例外を除いて2万円にまで規制。携帯電話会社の端末値引きを徹底的に規制し、大幅値引きを根絶しようという総務省の姿勢を見て取ることができます。

もう1つの目玉は、長期契約を結ぶ代わりに通信料金を値引く、いわゆる“2年縛り”の規制です。この“縛り”の存在が、消費者が他社へ乗り換えるのを妨げ、それによって競争が停滞し料金競争が起きない原因と考えたことから、長期契約による値引き額は170円、それを途中で解除した時の違約金上限は1000円と、従来の10分の1水準にまで引き下げる規制を打ち出したワケです。

しかし同時に、契約者の解除を妨げる要因になるとして、改正法では同じ携帯電話会社を長く契約している人に提供される、長期利用者向けの割引にも規制が入れられることとなりました。総務省はこれまで、むしろ長期利用者向けの割引は充実させるよう携帯電話会社に指導をしていたにもかかわらず、突如方針を転換したことには疑問の声も出ています。

トピック2:スマホの料金、正直安くなってないのでは?

電気通信事業法の改正で非常に厳しい規制がなされたことから、携帯電話各社は違法にならないよう、従来の料金プランを刷新した新しい料金プランや端末購入プログラムを導入しています。解約がしやすくなるなどメリットもありますが、プランを変えても、実際の料金はあまり変わっていないというのが正直な所ではないでしょうか。

通信料、結局4割も下がってないのでは? スマホ業界2019年振り返り【業界動向編1】

スマホ料金を下げるため電気通信事業法が改正されたものの、実際に新料金プランが安くなったと感じる人は多くないと思われます。

その理由の1つは、携帯3社が法改正など行政側の規制を見越して、あらかじめ対応の準備を進めてきたことが挙げられます。実際、分離プランはKDDI(au)が2017年の「auピタットプラン」「auフラットプラン」で、ソフトバンクが2018年の「ウルトラギガモンスター+」「ミニモンスター」で既に分離プランを導入していますし、NTTドコモも2019年4月の「ギガホ」「ギガライト」で分離プランを導入していることから、法改正があったからといって劇的に料金が下がる訳ではないのです。

2つ目は、携帯電話市場は既に飽和しているのに加え、少子高齢化の影響もあって市場成長が見込みにくいことから、携帯電話大手3社が積極的に料金を引き下げるモチベーションが働きにくいこと。そうした環境を変え競争を加速する存在として、行政が大きな期待をかけていたのが、2019年10月に新規参入した楽天モバイルだったのですが、同社はネットワーク整備の遅れなどで現在も試験サービスと言うべきサービス内容にとどまっており、その役割を果たせていません。

そして3つ目は、携帯3社は端末値引きが規制された代わりに、携帯電話料金と有力なインターネットをセットにすることで、サービスをお得に利用できる施策に力を注ぐようになったことです。実際、2018年にはKDDIが「Netflix」のサービスをセットにしてお得に利用できるプランを提供していますし、2019年11月には、NTTドコモが「ギガホ」の契約者に対し、「Amazonプライム」を1年間無料で提供することが発表され、話題となりました。

携帯電話会社にとって、通信料の値下げは業績に与える影響が非常に大きいものですが、端末代やインターネットサービス代の大幅値引きは、そこまで業績に影響を与えるものではありません。そうしたことから楽天モバイルが急成長するなど大きな市場変化が起きない限り、通信料金の値下げ競争は容易には起きず、当面はネットサービス値引き合戦が加速する可能性の方が高いといえそうです。

トピック3:ファーウェイ問題は結局どうなったの?

2018年12月、ファーウェイ・テクノロジーズの副社長である孟晩舟氏が、米国の要請によってカナダで逮捕されたことをきっかけに、同社を巡って米中での対立が激化。米国は同盟国にファーウェイ製の機器を導入しないよう要請したほか、商務省が2019年5月に、ファーウェイとそのグループ会社をエンティティリストに登録したことから、ファーウェイは米国企業との取引ができない状況となっています。

一連の出来事が、特に消費者に影響を与えているのはスマートフォンに関してではないでしょうか。実際ファーウェイは、米国企業であるグーグルとの取引ができなくなったことから、制裁後に開発したスマートフォンには「Google Play」をはじめとしたグーグルのアプリやサービスを搭載できなくなってしまっており、その影響からか例年日本でも投入されていた、同社のスマートフォン新製品の一部が投入されていません。

ですが米国は、何度か緩和措置を実施しながらも、ファーウェイに対する制裁措置自体を解除する様子はなく、制裁はしばらく続く見通しです。そのためファーウェイは、グーグルのアプリやサービスを搭載したスマートフォンは提供できない状況が当面続くものと考えられます。

それゆえファーウェイは制裁措置が今後も続くことを見越して、独自のプラットフォームとなる「Huawei Mobile Services」(HMS)を強化し、制裁が続く限りグーグルのサービスの代わりとして、HMSを搭載したスマートフォンを提供する方針を明確に示すようになりました。日本ではまだHMSだけを搭載したスマートフォンは登場していませんが、2020年も制裁が続くようであれば、日本でもHMS搭載スマートフォンが販売される可能性が高そうです。

著者プロフィール佐野正弘

福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。