――楽天モバイルとの5Gコアネットワーク(5GC)の共同開発とグローバル展開、そしてNTTとの5G基地局などの共同開発やグローバル展開を目的にした資本業務提携と、NECのネットワーク事業が今、大きく躍動し始めています。NECは2018年4月、それまでの「テレコムキャリアビジネスユニット(BU)」を「ネットワークサービスBU」に改称し、テレコムキャリア事業の構造改革を進めてきました。まずはネットワークサービスBUがどこを目指しているのか、その戦略をお話しいただけますか。河村 「通信」の役割は今、変わりつつあります。従来のようにヒトとヒトをつなぐだけではなく、モノやコトもつなげる時代になってきました。特に5Gでは、モノやコトをつなげることがメインになるだろうと思っています。そうしたなか、ネットワークを自由自在に操ることで、サイバー空間と実空間のモノやコトを効率よくつなぎ、最終的にヒトへと価値を還元していくことが、我々ネットワークサービスBUのミッションだと考えています。事業領域は大きく2つに分けられます。1つは従来からのテレコムキャリア事業、もう1つがエンタープライズ/パブリック事業で、キャリア以外の企業や自治体などにも、我々ネットワークサービスBUの通信の価値を広げていこうとしています。――そのモノやコトをつなぐネットワークを実現していくという事業の方向性と、今回の楽天やNTTとの提携の話は、大きな流れとしてリンクしているのでしょうか。河村 そうです。Society 5.0が目指しているような多種多様なモノやコトがつながる世界は、4Gまでのヒト同士だけをつなぐような従来の世界とは異なります。NEC1社ですべてをやることが無理な世界になると思っています。Beyond 5Gの世界になると、この流れはさらに加速しているでしょう。ですから、オープン化やパートナリングによってNECの価値を高め、この流れをNECがリードしていくことが今後は非常に大切です。今回の楽天やNTTとのパートナリングは、まさにそのための動きになります。オープン化は止められない――両社との取り組みの具体的な中身について教えてください。河村 NTTとは、数年前から両社の社長同士でどういう組み方ができるかをずっと議論してきましたが、それがこの半年で今回の提携という形で具体化しました。強いアセットを一緒に作り、グローバル市場に出していくことが目的です。以前のようにNTT仕様のアセットを作るわけではありません。ターゲットとしている市場は、あくまでグローバルです。国際競争力のあるアセットを一緒に作り、国内・海外のオペレーターに提供していきます。一方、楽天との共創は、構造が少し違っています。NECは5GCや基地局といった我々の価値を提供し、楽天はそれらを組み込んだ完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークプラットフォーム「Rakuten Communications Platform(RCP)」を自社の5G基盤として構築。そのうえで楽天は、海外のオペレーターにRCPを展開していきます。――NTT、楽天との提携の共通の背景としてあるのが、テレコム業界で進むオープン化の動きです。オープン化は今後どれくらい進展すると見ているのでしょうか。河村 ある調査会社によると、「オープン化を進めないといけない」と考えているオペレーターはおよそ2割、「オープン化が重要」と考えているオペレーターは約4割います。つまり、6割のオペレーターがオープン化の方向に行きたいわけです。現在はベンダー側のスケジュールで、いろいろなサービスの提供時期も決まります。日本の場合はオペレーターの方がベンダーよりも強いところがありますが、海外は特にベンダー主導です。しかし、これだけサービスが多様化してくると、自分が始めたいときにサービスを提供できることがオペレーターの大事な強みになっていきます。そうしたこともあって、「オープン化を進めたい」という強い思いがオペレーターにはあると考えています。ITの世界も、最初はなかなかオープン化が進みませんでした。しかし現在ではこれだけオープン化が進んでいます。ネットワークの世界には、今まさにオープン化の波がやってきたところですが、この流れは止められないと思っています。