【Mobile World Congress Shanghai 2018】
NTTドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアが共同でリリースした「+メッセージ」は、グローバルの共通仕様に基づいたサービスだ。仕様は、携帯電話事業者の業界団体GSMAが策定。「RCS(Rich Communication Service)」と呼ばれ、世界各国で採用が進んでいる。RCSはSMSを大幅に拡張した規格と位置づけられており、テキストだけでなく、画像や動画などのデータも送受信可能。メッセンジャーアプリに親しんだユーザー向けに、スタンプも用意されている。
日本のRCS導入事例として、3社の担当者から+メッセージが紹介されたMobile World Congress Shanghai(MWC上海)では、6月28日にRCSのセミナーを開催。3キャリアが同時に、かつ同じユーザーインターフェイスでサービスを開始した+メッセージが、セミナーに参加していた各国の通信事業者やベンダーなどから注目を集めた。日本からは、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの各担当者が登壇し、日本での状況を解説した。
GMSAのIP Communication Project DirectorのDavid O'Byrne氏によると、「日本はMNOすべてがRCSを導入した、唯一の国」だという。たとえば、米国ではAT&T、T-Mobile、Sprintの3社が導入しているが、Verizonでは未提供。MWC上海が開催された中国でも、中国移動1社のみがサービスを提供している状況だ。端末側は、サムスン電子が中心になり、ファーウェイやOPPOなどにも採用が進んでいるが、日本のようにキャリアが音頭を取り、メーカーを問わずにアプリをプリインストールするのは異例といえる。
GSMAのDavid O'Byrne氏日本は世界で唯一、MNOすべてがRCSを導入した国だという一方で、LINEの公式アカウントのような形で、法人がアカウントを用意し、チャットボットでユーザーとコミュニケーションを取ることができるなど、SMSよりも多機能ゆえに、キャリアにとって新たな収益源になる可能性を秘めている。RCSを導入済みの中国移動は、「2019年がRCS元年になる」と鼻息が荒く、今年中に1000万台以上の端末に導入する見込みだ。
中国移動もRCSの導入を強力に推進。2019年はRCS元年になると意気込む日本での状況は、3社の担当者が交代で解説した。ドコモのスマートライフ推進部 コミュニケーションサービス 課長 戸部章子氏は、日本のメッセージサービスの歴史を紐解きながら、SMSの相互運用が2011年と各国に比べて遅かったことを指摘。「日本はEメールサービスがメジャーだったため」だが、この反省を踏まえ、+メッセージは「3社が協力して同時に、同じロゴでサービスをスタートした」。
ドコモの戸部氏日本のキャリアのメッセージサービスの歴史ソフトバンクの田中氏は、+メッセージの具体的な機能を紹介ソフトバンクのIoT事業推進本部 Iot技術統括部 AIP設計部 課長の田中栄子氏は、+メッセージの特徴を「Easy(簡単)」「Convenient(便利)」「Fun(楽しい)」の3点にあると紹介。SMSと同様、IDやパスワード不要で利用できる手軽さや、画像などのデータを送受信できる利便性、スタンプでのコミュニケーションが可能なエンターテイメント性があることを解説。スタンプについては、今後も継続的に追加していく方針が明かされた。
「簡単」「便利」「楽しい」がキーワードだというKDDIの商品企画本部 パーソナルサービス企画部 CXサービスグループ マネージャーの小頭秀行氏は、3社が共同で+メッセージを立ち上げた狙いを語る。日本では、過去にキャリアが独自で立ち上げたメッセージサービスが複数あったが、「それらはあまり成功しなかった」。こうした経験を活かし、「スペック、サービスロゴ、ユーザーエクスペリエンスまで統一して、共同でサービスを立ち上げた」(同)という。
KDDIの小頭氏は、3社共同でサービスを立ち上げた理由を語った特定のキャリアに閉じたサービスは、成功しなかった。この反省を踏まえ、3社が協力した小頭氏によると、+メッセージはGSMAの「RCS Universal Profile 1.0」(最新バージョンは2.2)に準拠しているが、名前を統一したのは「ユーザーが理解しやすい状況を作るため」だという。ユーザーインターフェイスを統一したのは、「キャリアを乗り換えても使いやすくなる」(同)メリットがあるからだ。時期は未定ながら、今後は、「ビジネスメッセージ、MVNOへの提供、海外との相互接続を実現させる」(同)予定だ。
仕様を統一することで、ユーザーが理解しやすくなるだけでなく、キャリアを乗り換えた際にも迷わず使えるのがメリットとなるサービスインから約1カ月半が経過し、Androidだけでなく、iOSでの提供もスタートした+メッセージだが、すでにユーザー数は「3社合計で200万を超えた」(同)という。セミナーと同時の6月28日には、トラブルで配信が停止していたソフトバンクのAndroid向け+メッセージのサービスが再開しており、ユーザー数はさらに増えることが予想される。
MWC上海のGSMAブースには、RCS Universal Profile 2.0の準拠したチャットボットのサービスも展示されていた。同サービスは米国で3月に開始されており、AT&Tのネットワークで利用できる。現時点で対応しているのは、Galaxy S9など、サムスン電子製の端末。通常、サムスン電子の端末はオレンジ色のSMSアプリが内蔵されているが、RCSに対応している場合、これが青色になる。
SMSアプリをRCSアプリに置き換えるサムスン電子。アイコンの形は変えず、色をオレンジから青に変更したチャットボットでは、花を注文したり、コーヒーのクーポンを取得したり、HTML5で書かれた簡易型のゲームができたりと、さまざまなサービスが利用できた。花を注文する場合、あらかじめサービス提供者のサイトでクレジットカードを登録しておけば、決済までワンストップで行えるという。サムスン電子は、こうしたサービスを提供するためのSDKを用意しており、他のメーカーにも採用を働きかけているという。
ボットとチャットするだけで、花を買ったり、クーポンを受け取ったり、ゲームを遊んだりといったことができた時期は未定ながら、将来的には、日本の+メッセージもこうしたビジネスメッセージに対応する予定だ。セミナーに登壇した調査会社・MobilesquaredのNick Lane氏は、2022年のユーザー数を5140万と推測。RCSから得られる収益も、2億8100万ドル(約310億円)に達すると予想している。
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