香港にあるHSBCの支店の前で「人間の鎖」を作る、デモ抗議活動の参加者たち(8月) Photo: Geovien So / SOPA Images / LightRocket via Getty Images
譚璐美
Text by Romi Tan
今日はクリスマス。だが香港では、ホリデーシーズンも関係なくデモ抗議活動が行われている。その経過を世界中のメディアが報じてきたが、日本と欧米メディアの報道姿勢には大きな違いがあったと、譚璐美氏は指摘する。いったいその違いとは? そして、騒乱の香港が2019年に大きく失ったものとは──?香港では今年6月、容疑者の身柄を中国本土に引き渡せる条例改正の動きに反発して、100万人の抗議活動が始まり、すでに半年も続いている。抗議活動は、香港政府が改正案を撤回した後も、11月の区議会選挙で民主派が圧勝した後も収まらず、政府トップの行政長官の直接選挙の導入や、警察の取り締まりが適切かどうかを調べる「独立調査委員会」の設置など、「五大要求」を掲げる学生や市民の反発がいや増すばかりだ。香港政府によれば、この半年で900を超える抗議活動があり、逮捕者は6000人を超え、デモ隊との衝突で、警察はすでに1万6000発の催涙弾を使ったという。長引く抗議デモで、香港経済は7~9月期に約10年ぶりにマイナス成長に転じ、2019年の域内総生産(GDP)は前年比1.3%減となる見込みで、不況は来年まで続く可能性が高そうだ。日本では、こうした抗議デモの経過を同情的に報じているが、どうも欧米の報道姿勢とは一味も二味も違うようだ。そこで、今回は、欧米メディアが報じてきた半年間の香港情勢について、まとめて振り返ってみたいと思う。残り: 5170文字 / 全文 : 5782文字lockこの記事は会員限定です。
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譚璐美 タン・ロミ作家。東京生まれ、本籍中国広東省高明県。慶應義塾大学卒業、ニューヨーク在住。慶應義塾大学講師、中国広東省中山大学講師を経て、元慶應義塾大学訪問教授。日中近代史を主なテーマに、国際政治、経済、文化など幅広く執筆。著書に『中国共産党を作った13人』『阿片の中国史』(新潮新書)、『柴玲の見た夢』(講談社)、『中国共産党 葬られた歴史』(文春新書)、『日中百年の群像 革命いまだ成らず』(上下巻、新潮社)、『ザッツ・ア・グッド・クエッション! 日米中、笑う経済最前線』(日本経済新聞社)、『帝都東京を中国革命で歩く』(白水社)ほか。最新刊『戦争前夜』(新潮社)、好評発売中!
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