Intelが米国オハイオ州に200億米ドルを投じて製造施設を建設する計画だと報じられたが、同社はその報道に対し依然として口を閉ざしている。 米国最大の半導体メーカーである同社が用地として選んだのは、オハイオ州の州都であるコロンバスの東に位置するリッキング郡の土地だという。Columbus Dispatchの報道によると、計画中の製造施設では3000人の労働者が直接雇用される見込みで、材料や機器のサプライヤーから成るエコシステムの創出を促すことも期待されているという。 Intelのコーポレートコミュニケーション部門でシニアディレクターを務めるWilliam Moss氏は、この報道に関する米国EE Timesからの問い合わせに対し、メールで「この件に関してコメントは控える」と返答した。
この報道は、半導体製造の米国への回帰を示唆している。半導体製造のうち米国が占めるのは12%にすぎないが、TSMCとSamsung Electronics(以下、Samsung)は米国で新たな投資を行うことを約束している。 Intelは2021年、ファウンドリー事業の顧客にさらなる能力を提供するため、米国アリゾナ州チャンドラーで新たな半導体プロジェクトを2つ立ち上げた。Intelによると、この200億米ドルのプロジェクトは、アリゾナ州の歴史において最大規模の民間投資だという。 Samsungは2021年末、製造施設関連の最新プロジェクトにテキサス州の用地を選んだ。同社はこのプロジェクトに170億米ドルを投じる予定だ。その施設によって、Samsungが同州オースティンに置く既存の製造施設の能力が拡大する見込みだという。 TSMCは2022年に440億米ドルもの資金を投じて、SamsungやIntelといったファウンドリー事業の競合先に対する製造面の優位性を維持する計画だ。 台湾に拠点を置くTSMCは現在、アリゾナ州フェニックスに5nmの製造施設を建設中だ。このプロセスノードは既に台湾で生産段階に入っている。同社は、2022年末には世界で初めて3nmチップの生産を開始する見込みだ。2020年に発表されたアリゾナ州の新たな5nm製造施設での生産は2024年に始まる予定だ。 提案されている米国連邦政府の奨励策は、技術サプライチェーンの混乱に対処したものであり、米国に新しいファウンドリー投資を呼び込むよう作られている。520億米ドル規模の「CHIPS for America Act」の目標は、今後10年にわたり国内産業をよみがえらせることである。この法案は既に上院では可決されているが、いまだ下院が審議中だ。 同法案は、5G(第5世代移動通信)や高性能コンピューティング(HPC)といった成長中の新たな市場における支配力を巡り、米中で技術戦争が繰り広げられる中で策定された。米国は、中国の通信大手Huaweiに対する高性能チップの供給を停止した。一方、中国は自動車用バッテリーやレアアース材料の輸出を規制する構えだ。レアアースは電子製品に幅広く用いられている材料だが、中国は世界のレアアースのうち約9割を供給している。また、世界の自動車用バッテリーの大半を製造しているのも中国だ。 技術戦争の中で、中国と米国は電子製品、特に機密性の高いデュアルユース技術に使用される電子製品のサプライチェーンを別々に構築し始めている。
EE Times Japan