新型コロナウイルス感染拡大の影響で、生活に困窮する人が増加している。その結果、借り入れが限度額に達している人などが、SNSで知り合った相手にお金を借りる「個人間融資」に手を出してトラブルに巻き込まれる例が増えているという。このトラブルの実態について見ていきたい。
「主婦の方やシングルマザーなどコロナでお金に困っている方、ご相談ください。正直ほかは詐欺ばかりです。#即日融資可能 #個人間融資 #即日融資」「お金に困ってます。2〜30万ほど必要ですが、取り急ぎ5万円お願いしたいです。どなたかお願いします #お金借りたい #お金に困ってます #お金貸してください」
Twitterには、このようなお金を貸すという投稿、借りたいという投稿があふれている。コロナ禍で生活苦に陥る人が増え、このようにSNSでの個人間のお金の貸し借り行為も増加している状態だ。
「シフトが減らされて給料が入らなくて、生活が苦して、思わずTwitterで検索していた」と、個人間融資に手を出したある30代男性は言う。「初回だからと1万5000円だけ借りられた。一週間後に返済を求められたが、返済額は3万5000円だった」という。金利は約130%。これは年利にして上限金利の年利20%を300%以上超える法外なものとなる。
「金利とか計算する余裕はなくて、借りられるならいいやと思って思わず借りてしまった。結局借金が増えただけだったし、借りるときに免許証写真などを送っているので、悪用されないか心配だ」と男性は肩を落とす。このようなトラブルに巻き込まれる例が増えているのだ。
個人間融資では、借りる条件として、住所や電話番号、勤務先情報、顔写真、家族の連絡先など多数の個人情報提出を求められたり、身分証や全裸写真の送付を求められることもある。返済が滞った場合、強硬な取り立てとともに、身分証や裸の写真がネット上にばらまかれることになる。
そもそも取り立ては厳しく、子どもの通う学校や園などに1日何十回と電話をしたり、勤務先や実家に取り立てに行ったり、中には恋人の家や実家にまで取り立てに行くこともあるという。
また、個人情報がばらまかれると、闇金業者から狙われやすくなったり、オレオレ詐欺などの犯罪行為に勧誘されるという話もある。Twitterで「#借りパク」などで検索すると、多数のさらされた身分証写真などが見つかる状態だ。
滞納した結果、玄関に裸の写真や嫌がらせを貼られたり、女性に対して性行為を要求して撮影し、アダルトサイトなどに投稿された例もある。性的行為を条件に女性にお金を貸し付ける「ひととき融資」も行われている。
なぜ、SNSで個人間融資に手を出してしまう人が少なくないのだろうか。
SNSは普段使っているツールであり、身近な存在だ。店舗に訪れたり、電話を掛けるよりも敷居が低く、気楽に連絡してしまいやすいと考えられるのだ。コロナ禍でこれまで借金などに縁がなかった人が、身近な存在であるSNSでこのような投稿を目にして手を出してしまうこともあるようだ。
また、多くの個人間融資では「即日融資可能」となっており、行政機関などに助けを求めたり、金融機関に借りるよりも早くお金が手に入るため、今日明日の生活に困っている人が手を出してしまいやすいのではないだろうか。
個人間融資というものの、実際は闇金業者のことも多い。また、そもそもたとえ個人でもSNSを通じて不特定多数に繰り返し貸し付けている場合は貸金業とみなされ、無登録で貸金業を営むとして貸金業法違反、上限金利を超える場合は出資法違反に当たる。
金融庁は2019年に「金融庁個人間融資対策」アカウントを開設し、Twitterでのネットパトロールを開始。2019年11月~2020年10月までの間に、融資を呼びかける回数が多いなど悪質性の高い計191件の投稿に注意喚起を行い、削除につなげている。
最近は、InstagramやTikTokなどにもこのような個人間融資に関する投稿が増えている。連絡先としてLINEのQRコードを掲載していたり、「興味があればDMください」と音楽とともに動画を投稿していたりする。若者などが興味を持つとかなりリスクが高いと言えるだろう。
行政などに困ったときに助けてくれる制度もあるので、くれぐれもSNSで知り合った個人にお金を借りないようにしてほしい。トラブルに巻き込まれてしまった人は、「日本貸金業協会/0570-051-051」「消費者ホットライン/188」「警察相談専用電話/#9110」「金融庁 金融サービス利用者相談室/0570-016811(IP電話からは03-5251-6811)」に相談してほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
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