米ウォール・ストリート・ジャーナルは世界的な半導体不足の波が、ついにスマートフォン業界にも押し寄せたと報じた。
スマホメーカーは通常、主要部品を約半年前に調達しており、自動車やパソコン、家電などのメーカーが直面しているような部品不足問題を回避してきた。だが、ここに来てスマホ各社の在庫も減少しており、大手の出荷にも影響が出始めているという。
韓国サムスン電子も主要部品の調達で苦戦しており、今後のスマホ出荷台数が前年比で20%減少するとみている。米グーグルは「Pixel 5a 5G」について、2021年は米国と日本の2カ国限定で発売すると明らかにした。中国の小米(シャオミ)は21年4月にインドで「Mi 11 Ultra」を発表したが、発売時期が同7月にずれ込んだ。
業界アナリストによると、高価格帯端末を手がける米アップルはサプライチェーン(供給網)に大きな影響力を持っており、こうしたトラブルに巻き込まれていない。サムスンも大半の高価格帯端末でこの問題を回避できている。その一方で、スマホ業界の8割超が部品調達の問題を抱えているという。
香港の調査会社カウンターポイント・リサーチによると、21年1〜3月期の世界スマホ出荷台数は前年同期比で20%増加。新型コロナの影響がなかった19年1〜3月期との比較では4%増加した。
ワクチン接種の進展や、経済再開がもたらす消費増によって、21年のスマホ市場は好調に推移するものとみられていた。しかし、ここに来て半導体不足問題が市場に暗い影を落としている。21年後半の世界出荷台数は7億7100万台で、前年同期比1.3%増にとどまるとカウンターポイントはみている。
米サスケハナ・ファイナンシャル・グループのアナリストによると、健全とされる半導体の供給リードタイムは12~14週間。しかし21年6月のリードタイムは19週間で、サプライチェーンの危険水域とみなされる16週間よりも長かった。
こうした遅延に加え、スマホの主要な製造拠点であるインドやベトナムで新型コロナの感染が引き続き拡大しており、メーカーはこれらの問題に対処しなければならない。
この状況はスマホ新製品の市場投入にも影響を及ぼしているという。カウンターポイントによると21年前半に世界のメーカーが発売した新モデルは約300機種。前年同期の370機種に比べ18%少ないという。
シンガポールに本部を置く調査会社カナリスによると、21年4〜6月期の世界スマホ出荷台数は前年同期比で12%増加した。好調に見えるが、これは1年前に、新型コロナの影響で大きな落ち込みとなった反動だ。
21年4〜6月期のメーカー別出荷台数の上位5社は、サムスン、シャオミ、アップル、中国OPPO(オッポ)、中国vivo(ビボ)の順。
シャオミはアップルを抜いて初めて2位に浮上した。ただし、シャオミ端末の平均販売価格はサムスン製品に比べて40%、アップル製品に比べて75%安価。
シャオミにとって今後の課題は高価格帯製品の販売を伸ばすことだとカナリスは指摘している。
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