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発表は4月なのに発売は11月、「Xperia 5 III」に何が起きたのか

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ソニーが11月中旬以降に発売する「Xperia 5 III」だが、実はグローバルでは2021年4月に発表済みだった

 発表は4月なのに発売は11月、「Xperia 5 III」に何が起きたのか

ソニーは9月30日、スマートフォンの新機種「Xperia 5 III」を国内の一部通信事業者を通じて11月中旬以降に販売することを発表しました。Xperia 5 IIIはグローバル向けのイベントで、より大画面の「Xperia 1 III」などとともに4月に発表されたのですが、なぜ日本での発売まで半年近くかかったのでしょうか。【画像】Xperia 5 IIIは、上位機種「Xperia 1 III」並みの装備を持ちながら、ディスプレイを6.1インチに小型化してコンパクトに仕上げたのが特徴だグローバル発表から半年近く経ってからの発売少し前の話になりますが、去る4月14日、ソニーはグローバル向けのスマートフォンの新製品発表会を実施しました。そこで発表されたのは、ミドルクラスの「Xperia 10 III」とフラッグシップの「Xperia 1 III」で、これらは国内でもそれぞれ6月、7月に販売が始まっているのですが、実はもう1機種、同時に発表されたモデルがありました。それが「Xpeira 5」シリーズの最新モデル「Xperia 5 III」です。Xperia 5シリーズは、フラッグシップの「Xperia 1」シリーズの機能・性能を可能な限りそのまま継承しつつも、コンパクトなサイズ感を実現したモデルとして知られています。Xperia 5 IIIも、可変式のレンズを搭載した望遠カメラをはじめとした3眼構成のカメラを搭載し、すべてのカメラに「デュアルPD」を採用して幅広いシーンで高速なオートフォーカスを可能にするなど、一部を除きXperia 1 IIIのカメラ機能を継承した非常に高い性能を誇ります。それに加えて、Xperia 1 IIIと同様にチップセットは「Snapdragon 888」を搭載するなど、とても高い性能を備えています。その一方で、従来のXperia 5シリーズと同様に21:9比率の6.1インチディスプレイを搭載し、横幅が68mmと片手で持ちやすいコンパクトなボディを実現しています。そして9月30日、そのXperia 5 IIIが日本で販売されることをソニーが発表しました。発売時期は11月中旬以降の予定で、日本の一部の通信事業者から販売されるとのこと。同時にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が取り扱いを発表しており、携帯大手3社から順当に販売されるようです。ただ、欧州や台湾などの海外でも、Xperia 5 IIIの販売が始まったのはやはり9月に入ってからのようです。4月に発表されたにもかかわらず、発表から販売まで半年前後もかかってしまうのは普通ではない印象です。なぜ、そのような事態となったのでしょうか。コロナ禍の影響が大きいが、コンパクト・ハイエンドの今後に不安もそれには、やはり新型コロナウイルスが大きく影響したと考えられます。ソニーは例年、スペイン・バルセロナで開催される携帯電話の見本市イベント「MWC Barcelona」でスマートフォンの新製品を発表しているのですが、2021年の同イベントはコロナ禍の影響により、例年の2月末から3月頭ではなく、6月末から7月頭にかけて実施されました。ですが、6月に入ると欧米などでのスマートフォンの商戦期とずれてしまうことから、ソニーは4月に発表会を実施するに至ったといえます。ただ、MWC Barcelonaで発表するのはXperia 1シリーズなどであり、初代の「Xperia 5」は2019年9月、ドイツ・ベルリンで開催される家電の総合見本市イベント「IFA」に合わせて発表されました。それゆえ、例年通りであれば、Xperia 5 IIIはIFAで発表されていたと考えられます。しかしながら、2021年はコロナ禍の影響でIFAそのものの開催が中止となってしまいました。そうしたイレギュラーなできごとが重なったことから、4月にXperia 1 IIIとXperia 5 IIIを同時に発表し、さらにXperia 5 IIIの発売時期をずらすという判断に至ったといえそうです。それゆえ、2021年は無事投入に至ったXperia 5シリーズですが、今後を考えるとXperia 5のコンセプトでもある「コンパクトでハイエンドなスマートフォン」というコンセプト自体が、大画面ニーズの高まりによって市場から受け入れられなくなりつつあることが気がかりでもあります。そのことを象徴しているのが、アップルの「iPhone 12 mini」です。2020年にiPhoneのラインナップに追加されたiPhone 12 miniは、5.8インチディスプレイを搭載するコンパクトなボディを備えながら、チップセットに「A14 Bionic」を搭載、5Gにも対応するなど非常に高い性能を備えたコンパクト・ハイエンドモデルとして注目を集めました。ですが、実際に販売が始まると、他のiPhone 12シリーズが軒並み好評なセールスを記録するなか、ディスプレイの小さいiPhone 12 miniだけが販売不振に陥る事態となったのです。そうしたことから、iPhone 13シリーズでは「mini」がなくなるのでは?という懸念もありましたが、2021年の新iPhoneのラインアップに「iPhone 13 mini」は無事含まれており、継続投入に至ったようです。ただ、iPhone 12 miniの販売不振を考慮すると、例年通りであれば大幅なモデルチェンジが図られるであろう次のiPhoneで、miniがラインナップから姿を消す可能性は高いのでは…?という見方は依然多いようです。スマートフォンの利用用途の主体が、コミュニケーションから動画やゲームなど幅広いコンテンツの利用へとシフトしたことで、大画面に対するニーズが高まっているのは確かでしょう。そうした市場環境において、コンパクトさを重視したXperia 5シリーズが安泰とはいえなくなってきているのも確かですが、一方でコンパクトさを求めるニーズが根強く存在するのも事実。2022年に向けて、ソニーが今後どのような判断を下すのか、注目されます。 佐野正弘福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

佐野正弘