企 代表取締役のクロサカタツヤ氏。通信、放送分野の経営コンサルティングに従事し、2016年から慶應義塾大学特任准教授、総務省情報通信政策研究所でコンサルティングフェローを務める。近著に「5Gでビジネスはどう変わるのか」
<5Gを「バラ色の世界」と認識させるきっかけの1つとしてクロサカ氏が示したのは、業界団体の「第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)」が発表した5G利用シーンのイメージの図。「最終的にはこういう世界が訪れるだろうとは思う」とクロサカ氏も認めているものの、5Gらしい世界が訪れるのは、まだ先との認識だ。
5GMFが発表した5G利用のイメージ。ドクターヘリで移送中に手術したり、ロボットによる農業ができたりするようになる、としている<5Gになっても、当初は体感的に4Gとそれほど変わらないのでは、ということは既に予想されているが、クロサカ氏はそれを、先行して5Gを導入した米国や韓国の事例から説明した。
クロサカ氏が調査した5G提供地域は住宅地で見通しもいいが、それでも実際に利用できる戸数は少ない。「基地局から100メートル離れるとグンと減ってしまう。これが恐らく5Gの1つの現実だろうと考えられる」(クロサカ氏)
<5Gを難しくしている要因の1つは周波数だ。日本では現在、28GHz帯、4.5GHz帯、3.7GHz帯が5G用に割り当てられているが、5Gで使われる周波数は4Gや3Gで使われている周波数よりも高い。高い周波数の電波は直進性が高く、雨や樹木、場合によっては人体によっても電波が遮蔽(しゃへい)されてしまうことがある。電波は高くなると光の性質に近づいていくので、「カーテンで覆われたり、雨が降っていると何となく暗かったりというのと同じ。部屋の奥の方に行くほど太陽の光が入らないのと同じように、電波も届かないことが普通に起きる」。
MECや基地局の共用、ローカル5Gなど、さまざまなソリューションを活用して、よりよい5Gネットワークを構築していく必要がある
<5Gに対する期待が大きすぎる現状を考慮すると、「幻滅期が訪れるだろうと考えることは、むしろ自然」とクロサカ氏は警告。ただ、「だから5Gがダメだということではなく、むしろ幻滅期にどうベストミックスを作っていくか、どういうビジネスを作っていくのかを考えることが非常に重要」と語り、幻滅期を乗り越える人が5Gエコシステムのメインプレイヤーになると期待した。
MVNOの果たす役割は?