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ガーナの「電子ゴミ墓場」にアートで変革を試みるMAGO、アフリカにおけるSDGsの高まりを紐解く

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の反田 広人氏、GB SDGsチームが共同執筆した。

SDGsの取組みは私たちの社会に根付いてきています。日本国内トレンドとしてもSDGsについてはここ1年ほどで大きく動いており、政府発表による「2050年カーボンニュートラル」宣言が寄与しているものと考えられます。

GBでもSDGsへの取り組みについては注目しており、これまでにも数多くのレポートや支援先活動をお伝えしてきました。

さて、今回注目したいのは「発展途上国・新興国におけるSDGs」です。発展途上国や新興国では、環境や社会、女性活躍などさまざまな面で先進国と異なる課題を抱えています。皆さんは9月7日の「青空のためのきれいな空気の国際デー」をご存知ですか。2020年から開始された新たな国際デーです。

私たちがいつも吸っている空気、それはどの土地でも綺麗とは限りません。大気汚染は心臓病や肺がんなど呼吸器疾患の一因となっており、特に発展途上国・新興国を中心に、大気汚染により早死する人は全世界で毎年700万人に上るとWHOが試算しています。

大気汚染と新型コロナウィルスによる死亡の関係性も指摘される中で新興国を中心に影響が心配されています。本稿ではガーナのスラム街をアートとビジネスの力で持続可能な社会に変貌させようという「MAGO CREATION株式会社(以下「MAGO」)」の取り組みを通じて、発展途上国・新興国におけるSDGsの課題について紐解いてみたいと思います。

ここ2、3年に渡り、生産性文脈で多くのツールが登場し、中でも大手プラットフォームの体験を最適化して提供するサービス形態に注目が集まりました。

MAGOの代表を務める長坂真護さんは1984年生まれのアーティストで、2009年に自身が経営する会社の倒産を機に路上アーティストになった人物です。2017年にガーナのスラム街「アグボグブロシー」を訪れ、先進国が捨てる電子ゴミ(E-Waste)を燃やし、取り出した銅などの金属を売ることで生計を立てている人々に出逢います。

この地域は、世界中の先進国から使われなくなった電子機器が廃棄され「世界最大級の電子機器の墓場」という異名が付けられていました。

資本主義の大量生産・大量消費社会が生み出した闇の部分が、立場の弱いスラム街に押しのけられている。ーーこのことを知ったMAGOはこの現状を世の中に発信し、そして解決するための活動を開始します。

彼らの特徴はここで掲げた「サスティナブル・キャピタリズム(持続可能な資本主義)」という信念にあります。サスティナブル・キャピタリズムは「文化」「経済」「社会貢献」、この3つの歯車を回しながら持続的な社会を実現する活動だそうです。この具体的な活動内容についてお聞きしたところ、MAGO代表の長坂さんは次のようにコメントしてくれました。

「例えば、MAGOのガーナ作品を所有する人が増えるほど現地のゴミが減り、経済に貢献し、さらに文化性も高まります。そして同時に、世界中にこの問題のメッセージが広がる。これがサスティナブル・キャピタリズムの真髄です。これまで美術家がタブーとされていた経済活動をMAGOは積極的に取り入れているのです。買ってくれた人も、現地の人も、地球も喜ぶ。文化、経済、環境全てが動く、これが真のサスティナブルです」。(長坂さん)

このような活動が身を結び、翌年の2018年にはスラム街で初となる学校やミュージアムの設立に貢献されます。さらにこの様子を捉えたフィルムは、アメリカのドキュメンタリー映画アワード「Impact Docs Award」で優秀賞4部門を受賞されました。

さて、このように新興国には外から見えづらい課題を抱えていることがあります。長坂さんによると、ガーナの現地には「環境」と「経済」の2つの問題が大きく立ちはだかっていると言います。環境面では、東京ドーム30個分と言われる広大な土地に、果てしなく積み上がった電子機器のゴミが広がっており問題となっています。さらに現地で生活を送る住民はそれら電子機器を燃やすことで、中から銅などの金属を抽出し生計を立てており、大気汚染に関する問題が加わっています。

そして経済です。ここまでして環境を汚染し、電子機器を燃やして得られた金属を売る作業はわずか日当500円にしかならないそうです。結果、満足に教育も受けられずに貧困から抜け出せないという負のループが渦巻き、さらに悪いことには、電子機器を燃やすことで発生する有毒ガスを毎日吸込むため、彼らの平均寿命は30代半ばという短命といわれています。

ガーナの「電子ゴミ墓場」にアートで変革を試みるMAGO、アフリカにおけるSDGsの高まりを紐解く

長坂さんはこの現状に対しアクションを起こし、そしてその目はすでに次の世界に向かっていました。

「我々はこれまでアート作品の売上を通じて、現地の方々に1,000個以上のガスマスクの供給をしたり、学校に通えない子どもたちのために現地で大卒スタッフを採用して学校運営を手がけてきました。また、外国人の新たな観光収入源として、アートのミュージアムの建設なども行っています。 今後はさらに現地への投資を加速させながら、次の2大プロジェクトを進めるべく準備をしているところです。

1つ目は、現地へのリサイクル工場の建設です。これまでゴミを燃やすしか選択肢がありませんでしたが、適切な処理によって空気を汚さずに、電子機器を処理するための手段を提供しようと考えています。2021年11月よりガーナに訪問し、第一リサイクル工場の建設に向けて調査を進めていきます。

2つ目は、ガーナ現地でのオリーブ栽培事業です。オリーブは他の植物よりも多くの二酸化炭素を吸収し酸素を供給します。これまで空気を汚す仕事をしていた彼らに、今度は空気を綺麗にする事業を提供しようと考えています。日本国内では、香川県の小豆島がオリーブ事業で有名ですが、2021年7月に小豆島に土地を購入し、オリーブ事業社から直接講義を受けることになっています。ガーナサイドでも、現地スタッフに協力してもらいながら、栽培エリアの土地購入に向け動いており、こちらも事業化に向け推進していきます」。(長坂さん)

MAGOの掲げるサスティナブル・キャピタリズムとは何か、そのシンプルな答えとして長坂さんは「売上が上がれば上がるほど、地球も人も豊かになるというビジネスモデル」と説明してくれました。リーズナブルな製品・サービスが評価されてきた世の中からこそ、サスティナブルな製品・サービスが評価されるような世の中の実現に向けて、少しでも貢献したい——。これがMAGOの目指す持続可能な社会づくりです。

MAGOのアプローチは「アート」を経済的な循環の手法としてだけでなく、課題のメッセンジャーとしてメディアのように活用することで、目に触れにくい、けれども世界的に大きな課題を解決する可能性を示してくれました。このように一見すると解けないかもしれない問題も、別の視点を当てることで新たな道が開けるかもしれません。

さて、最後にGBとして投資サイドからみるアフリカのポテンシャルについてまとめておきます。MAGOの活動にある通り、発展途上国・新興国では先進国がかつて克服してきた社会課題とはまた異なる問題を抱えるケースがあります。「環境」と「経済」の課題は、単にガーナ国内での課題ではなく、他のアフリカ諸国でも長年抱えている課題でもあります。その一方、インフラが未整備で発展途上地域と称されるアフリカにおいて最先端のテクノロジーを導入することにより、人々の生活に劇的な変化が表れている例も出てきました。

その代表例が「リープフロッグ(蛙飛びの成長)」です。

アフリカでは、固定電話の普及を飛び越え一気に携帯電話が普及し、銀行口座が開設できなかった層は口座を保有せずにモバイルマネーを使用するようになりました。例えばケニアのSafari.comが運営する決済サービスM-PESAがあります。総人口5200万人の国で実に2,260万人以上ものユーザーが利用し、750億ksh(約7億米ドル)の収益を上げているのです(2019年度同社レポートより)。

この急速な変化の中核を担うのがアフリカのスタートアップです。彼らの特徴は、ガーナで起こっているようなアフリカ全土に当てはまる社会課題の解決を目指していることと言えます。

過去5年間でアフリカスタートアップへの投資は7倍以上に膨らみ、起業の拠点となるインキュベーション施設は600ヵ所を超えています。

国連によると、アフリカの人口は現在の約13億人から2050年までに約24億人まで増加すると推測されており、世界人口のうち4人に1人がアフリカ人となる見込みです。この巨大な消費市場に対して、今まで大陸内になかったテクノロジーを駆使して市場を切り開いているのが彼らなのです。

スタートアップ創業者の顔ぶれも近年変化しており、欧米出身の高学歴の若者が現地での援助活動を通じて、アフリカに移り起業するケースに加え、「ディアスポラ」と称される欧米への移住者が、母国に戻り起業する流れも出てきています。こうした「ディアスポラ」の中には、ハーバード大学やスタンフォード大学などのトップ校で学んだ経験を有する人材もいます(※)。

先ごろ開催されたY Combinatorの最新バッチ(2021・夏)でも強くフォーカスが当たるほど、世界的なスタートアップ投資地域のひとつになっているのです。

アフリカの投資家によれば「かつてはディアスポラが帰国する場合は大学教授などの職に就いていたが、今ではそうした人材が起業している」と状況の変化を分析しています(JETRO調査レポートより抜粋)。

GBとしても、今後このようなアフリカや新興国におけるSDGs、社会課題解決に対するフォーカスを強め、情報発信をしていきたいと考えています。

※引用:JETRO(2020)「飛躍するアフリカ!イノベーションとスタートアップの最新動向」

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