楽天がKDDIに支払うローミング費用に関して、実はKDDIがIRの場で、「モバイル通信収入とマルチブランド通信ARPU収入の差分」が、ほぼその金額であるとコメントしているのだ。
Q. 例えばローミングでいうとモバイル通信収入とマルチブランド通信ARPU収入の差分のところで雰囲気を知ればよいか。A. ご推察のとおり。
出典:KDDI「2022年3月期第1四半期決算説明会 (決算ハイライト・質疑応答)」
そこで、KDDIの決算資料(2020年度Q1~2021年度Q1)からモバイル通信収入とマルチブランド通信ARPU収入を抜き出し、その差額をローミング費用として推計。グラフ化したのが、下記のグラフである。
グラフ:KDDIの楽天モバイルローミング収入(推計)出典:KDDI IR資料をベースにMCA作成このグラフから、たとえば2021年度Q1に楽天がKDDIへ支払ったローミング費用は330億円とみられることが分かる。2020年通期(1月~12月)のモバイルセグメント売上が2271億円(営業損失が2270億)だったが、そこからKDDIへローミング費用として672億円支払っていた計算になる。
当然だが、楽天の契約者数増に比例してローミング費用が増加しており、これが三木谷CEOが「ローミングコストがあまりにも高い」と嘆く理由だったのである。
周知のとおり、半導体調達の遅れから、今年夏としていた人口カバー率96%の基地局整備が今年中にずれ込むとしているが、既に東京都内はローミング提供を終了するなど、2022年3月までのローミング契約解消を急いでいる。
ローミングを早期に打ち切りたいというのが本音だろうが、当然だがそれを急ぐあまり、ネットワーク品質の劣化やエリア整備の不備を露呈してしまうことは、何としても避けなければならない。
同社では、2023年中の携帯電話事業黒字化の目標は変えておらず、ローミング費用という『呪縛』から解放された後が本当の勝負と考えているようだ。