国内では、3カ所目となる道の駅を拠点とした自動運転移動サービスがスタートした。現状レベル2相当の運行形態を採用しているが、レベル4実現に向けた法規要件策定の動きも出てきており、自動運転技術の社会実装に向けた取り組みは着実に前進している印象だ。
海外では、自動運転タクシー実用化やスマートEV(電気自動車)開発に向けた新たな動きが出るなど、変わらず活況を見せているようだ。
以下、2021年9月の10大ニュースを一つずつ振り返っていこう。
記事の目次
東京2020パラリンピックの選手村で運行中のe-Paletteが起こした事故をもとに、自動運転におけるヒューマンエラーに焦点を当てた記事構成となっている。
同事故は、自動運転システムの欠陥などではなく、オペレーターの確認・連携不足に起因して発生したものとされている。いわゆるヒューマンエラーだ。
自動運転実証は、自動運転システムの欠陥や誤作動、不測の事態などに迅速に対応できるよう常時監視・介入が行われるが、ちょっとした油断や判断ミスが事故・事案を招くことになる。また、ハードウェア・ソフトウェアのメンテナンスなどにおいてもヒューマンエラーは存在する。
レベル4サービス実用化後は、現場における運行管理をサービス提供事業者が行う場面が増加するものと思われるが、各オペレーターに求めるべき専門知識やオペレーションそのものの在り方についても、しっかりと精査していかなければならないようだ。
【参考】詳しくは「トヨタの自動運転車事故から「ヒューマンエラー対策」の重要性を考える」を参照。
トヨタの自動運転車事故から「ヒューマンエラー対策」の重要性を考える https://t.co/aTDkI11pCd @jidountenlab #トヨタ #自動運転 #ePalette #ヒューマンエラー
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 5, 2021
依然としてApple Carにまつわる「噂」が次から次へと飛び交っている。近々では、トヨタとの提携を模索していると報じるメディアが出てきているようだ。
その一方で、アップルはOEMとの交渉を断念し、自動車部品サプライヤーの選定を進めているとするメディアもある。関係者筋の話や推測などが入り混じり、もはや真実は闇の中だ。ティム・クックCEOが公式発表するまで、こうした報道が延々と続いていくのかもしれない。
自動車製造には高い安全技術が求められるため、OEMあるいはティア1サプライヤーとのパートナーシップが必須となるのか。あるいは、自動車の構造や生産そのものにイノベーションをもたらすような設計を前提に、FoxconnやXiaomiのように新たな体制づくりを進めていくのか。
憶測だが、アップルブランドに恥じないスマートEVの開発に向け、業界が驚く革新的なシステム・サービスの導入を進めているのではないだろうか。イノベーションが激しい業界のため、こうした情報は直前まで隠しておく必要がある。このため、交渉などを含め秘密主義を貫き通しているのではないか。
こうした憶測も、すべては期待感の表れだ。高まる期待がハードルをより高いものに変えていくが、それを軽々と飛び越してこそのアップルなのだろう。
【参考】詳しくは「Appleの自動運転車、「トヨタが製造」の噂」を参照。
Appleの自動運転車、「トヨタが製造」の噂 https://t.co/CYGqCM4q1s @jidountenlab #Apple #自動運転車 #トヨタ
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 7, 2021
川崎重工業、ティアフォー、損害保険ジャパンの3社が、ラストワンマイルを担う自動搬送ロボットの実用化に向け新たな動きを見せた。11月以降に東京都内で実証を行う計画のようだ。
ざっくり説明すると、川崎重工がロボットのハード面を開発し、ティアフォーがソフトウェア面を開発する。損保ジャパンは、実証計画の策定やリスクアセスメントなどを行う。各社が高い知見や技術を有する専門分野を生かしたパートナーシップだ。
開発を進めるのは小型の自動走行ロボットで、基本的には歩道走行を前提としつつも、実環境を踏まえて一部車道なども走行できるよう自律走行能力を高めていく方針のようだ。
新規参入が相次ぐ自動走行ロボット。今後も各社の実証が加速する見込みで、次のフェーズを見据えた取り組みに注目したい。
【参考】詳しくは「強力布陣で挑む!自動搬送ロボ、いよいよ都内で「車道端」も走行」を参照。
強力布陣で挑む!自動搬送ロボ、いよいよ都内で「車道端」も走行 https://t.co/9L4B5DPUCl @jidountenlab #自動配送ロボ #川崎重工 #ティアフォー
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 9, 2021
国土交通省の2022年度予算概算要求の概要がこのほど公表された。自動運転関連は軒並み増額要求となっているほか、注目すべき事業として「自動運転(レベル4)の法規要件の策定」が新規事業に挙げられている。
レベル4法の策定に向け予算2億円を要求しており、自動運転車と他の交通とのコミュニケーションや、システムが負う責任の範囲、システムが行う判断の在り方などについて調査を行うこととしている。
ドイツでは一足早くレベル4を可能にする道路交通法改正案が連邦議会で可決されたが、日本でも2022年度中に本格議論が進む見込みだ。
国内でも自動運転サービスの実装が進み始めているが、基本的に公道では実質レベル2の状態で運行せざるを得ない状況が続いている。導入予備軍となっているエリアも多いものと思われるが、レベル2サービス実証からレベル4導入に向けたステップアップを円滑に進めていくためにも、どの段階で本質的なレベル4を導入可能になるのか、規制面における明確なロードマップを早期提示する必要がある。
2022年度中に新たな道路交通法や道路運送車両法の改正素案がまとまるのか、要注目だ。
【参考】詳しくは「「自動運転レベル4」の法規要件の策定へ、国交省が2億円予算」を参照。
「自動運転レベル4」の法規要件の策定へ、国交省が2億円予算 https://t.co/Yxy7pP7KOQ @jidountenlab #自動運転 #レベル4 #予算 #国交省
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 10, 2021
中国スマートフォン大手のXiaomiが、EV事業を担う事業会社「Xiaomi EV」の設立を発表した。資本金100億元(約1,700億円)の大型事業だ。
2021年3月にスマートEV分野への進出を表明し、その後自動運転開発を手掛ける中国スタートアップのDeepMotionを買収するなど本腰を入れており、成長分野として将来の事業の柱に育てていく構えのようだ。
米Appleや台湾Foxconnなども同事業に参入しており、自動車産業における製造工程から変革を迫っていくことになるのは間違いない。また、こうした動きが同業他社を刺激し、新たな参入の呼び水となる可能性もあることから、今後の展開に要注目だ。
【参考】詳しくは「Xiaomi CarとApple Car、勝つのは?中国スマホ大手、自動運転EV市場へ参入発表」を参照。
Xiaomi CarとApple Car、勝つのは?中国スマホ大手、自動運転EV市場へ参入発表 https://t.co/gnVHEGcOi1 @jidountenlab #シャオミ #自動運転 #EV
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 13, 2021
パテント・インテグレーションが発表した特許分析レポートによると、2019年における日本国内の自動運転関連の特許出願件数は1023件で、首位はトヨタの234件となったようだ。
直近3年間(2019〜2021年)における特許出願件数は、トヨタ267件、本田技研121件、デンソー73件、三菱電機20件、日立製作所16件と続いており、トヨタの突出ぶりがうかがえる。
特許出願件数の推移を見ると、2014年ごろから大きな伸びを見せているのも特徴で、各社が自動運転開発に注力し始めた時期と見事にリンクしている。
まだまだ伸びしろは多く、今後もさまざまな技術やアイデアの創出は続きそうだ。
【参考】詳しくは「トヨタ独走!自動運転の特許出願件数、2019年は国内で234件」を参照。
トヨタ独走!自動運転の特許出願件数、2019年は国内で234件 https://t.co/zxyK5vXLBc @jidountenlab #トヨタ #自動運転 #特許
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 14, 2021
英IDTechExがこのほど、「自動運転車、ロボタクシーそしてセンサー 2022−2042」と題した調査レポートを発刊した。この中で、自動運転技術が成熟するであろう2050年代の交通事情にも言及しているようだ。
自動運転の安全性は、2024年には手動運転の安全性のレベルに到達するかもしくは上回るとし、今後10〜20年間で社会の移動方法を根本的に変え、自動車セクターの100年前のビジネスモデルに大きな混乱を引き起こすとしている。
そして2050年代には自動運転による事故が年間平均1件以下になり、人間による手動運転が最も危険な要素となるため、多くの国で人間による運転を原則禁止するという予測を打ち立てている。約30年後の未来だ。
1990年から2020年までの30年間では、インターネットや携帯電話・スマートフォンの普及など、当時では考えられなかったような社会変革が起きている。AI(人工知能)の発展が著しく進む現在、次の30年間も想像が及ばないようなイノベーションが起こることはほぼ間違いない。
レベル5の実現が前提となるが、手動運転に規制がかかる可能性も否定できるものではなさそうだ。
【参考】詳しくは「2050年代に「手動運転」禁止に 英調査会社が予測、自動運転技術の向上で」を参照。
2050年代に「手動運転」禁止に 英調査会社が予測、自動運転技術の向上で https://t.co/4uwCc6kwsA @jidountenlab #手動運転 #自動運転 #禁止
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 16, 2021
モービルアイが2022年からイスラエルのテルアビブとドイツのミュンヘンで導入予定の自動運転ライドシェア車両を発表した。モビリティサービスプロバイダーのSIXTやインテル傘下のMoovitのアプリを通じてサービスを提供するようだ。
ドイツでは、道路交通法改正により無人走行を実現するレベル4の社会実装が可能となる見込みで、モービルアイは2022年にミュンヘンで早期ライダーテストを開始し、規制当局の承認を得て商用展開に移行するという。
自動運転タクシーの開発においては、今のところグーグル系Waymoと中国の百度(Baidu)が先行しているが、ここに新たにインテル系が台頭する形だ。Waymoや百度は自国におけるサービス展開が主体となっているが、モービルアイは日本を含む世界展開に向け大きく動き出している。
欧州第1号候補として注目を集めるとともに、今後の展開に大きな期待が寄せられるところだ。
【参考】詳しくは「自動運転タクシー、「欧州第1号」はMobileye濃厚 2022年から展開」を参照。
自動運転タクシー、「欧州第1号」はMobileye濃厚 2022年から展開 https://t.co/UfB7QKLuzb @jidountenlab #自動運転タクシー #Mobileye #欧州
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 18, 2021
トヨタの決済アプリ「TOYOTA Wallet」が進化を遂げているようだ。同アプリ経由で他のアプリやサイトを利用可能にするなど、決済プラットフォームとしてスーパーアプリへの道を歩んでいる。
TOYOTA Walletは、同社のコネクテッド戦略の一環として2019年11月に実装された。「決済及び周辺サービスの拡大」「決済サービスを通じたお客様との接点強化」「MaaS発展に伴うモビリティ社会の基盤づくり」を掲げ、モビリティ関連をはじめとした日常的な決済サービスを提供することで利便性向上を図っている。
アプリ単体による利便性向上はもちろん、こうした決済分野でのネットワーク拡大は、さまざまなモノやサービスが結びついていく将来のMaaS発展にも寄与していくものと思われる。今後の展開に注目したい。
【参考】詳しくは「決済アプリ「TOYOTA Wallet」がスーパーアプリ化!「大阪王将」が第1弾サービスに」を参照。
決済アプリ「TOYOTA Wallet」がスーパーアプリ化!「大阪王将」が第1弾サービスに https://t.co/qkOjWt4Q5x @jidountenlab #トヨタ #スーパーアプリ #大阪王将
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 23, 2021
島根県飯南町の道の駅「赤来高原」を拠点とした自動運転サービスがスタートした。道の駅としては、秋田県北秋田郡上小阿仁村の「かみこあに」、滋賀県東近江市蓼畑町の「奥永源寺渓流の里」に次ぐ3番目で、「中山間地域の道の駅等を拠点とした自動運転サービス」事業としては福岡県みやま市を含め4番目の実装となった。
ヤマハ発動機のカートを改造した定員6人(乗客4人)の低速モビリティで、公道上を走行するためドライバーが常時監視を行うレベル2状態で運行する。
同事業では、全国18カ所で実証などが行われており、今後もサービスインする事例が続きそうだ。比較的交通量が少なく、低速モビリティで一定ルートを走行するため社会実装しやすい利点がある。
現状、公道はレベル2走行が前提となるが、法整備までに経験を積み重ね、社会受容性を醸成することでスムーズに無人走行に移行することも可能になりそうだ。
【参考】詳しくは「全国で3カ所目!道の駅×自動運転移動サービス、島根県で開始へ」を参照。
全国で3カ所目!道の駅×自動運転移動サービス、島根県で開始へ https://t.co/jZwTybllQF @jidountenlab #道の駅 #自動運転 #島根県
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 24, 2021
国内における自動運転サービスは着実に実を結び、花を咲かせ始めている。レベル2~3で実証を続け、新たな改正法のもとレベル4へスムーズに移行できるよう経験値を積み重ねている段階だ。
海外では、レベル4の本格実装で先行するであろうドイツが今後の手本となりそうだ。米国・中国における社会実装とは異なる形で自動運転サービスがどのように実装され、広がっていくのか。また、こうした環境整備を受け、ドイツへの進出を図る開発各社の動きなどにも要注目だ。