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2022年の注目スマホ「Galaxy S22」「Redmi Note 11」にみるハイエンドスマホの存在価値

書かれた 沿って mobilephonebrand

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、グローバル発表された「Galaxy S22」シリーズと「Xiaomi Redmi 11」シリーズについて話し合っていきます。

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「Galaxy S22 Ultra」の正体は「Galaxy Note」シリーズの後続機!?

房野氏:「Galaxy S22」シリーズがグローバル発表されました。例年通りであれば、日本での発売にも期待ができるモデルですが、どのような印象をお持ちですか?

房野氏

石野氏:「Galaxy S22」「Galaxy S22+」の2モデルは、2021年発売の「Galaxy S21 5G」「Galaxy S21+ 5G」からのマイナーチェンジというか、ほとんど変化が見られませんでした。トピックスとしては「Galaxy S22 Ultra」の進化くらいですかね。

石野氏

房野氏:Galaxy S22、Galaxy S22+は、デザインもあまり変わりませんでしたね。

石川氏:Galaxy S22 Ultraも、「Sペン」が本体格納になったくらいじゃない?

石川氏

石野氏:Galaxy S22 Ultraは、デザイン的には「Galaxy Note」シリーズにかなり近くなっています。Sペンも格納しましたし、実質的には、“Ultra”が廃止になって、“Note”を持ってきたようなイメージです。

法林氏:実質、Galaxy Noteだよね(笑)

法林氏

石野氏:作戦としては新しいのかもしれないけれど、「Sシリーズで初めてSペンが本体格納できます」という説明も、「それNoteでやってたじゃん!」ってツッコミたくなります(笑)

房野氏:2021年モデルの「Galaxy S21 Ultra 5G」はどのような端末でしたっけ?

石野氏:カメラが大きくてすごい、という端末でしたね。本体格納ではないものの、Sペンにも対応しました。デザインはほかのSシリーズと似ていましたけれど。これに対して、今回登場したGalaxy S22 Ultraは、デザインがほかのS22シリーズとは完全に独立しているし、ディスプレイの四隅が直角になっています。Sペンでメモを取ることを前提とすると、角が丸くなっているのは使いにくいですからね。歴代のNoteシリーズと比較してみても、「Galaxy Note 20 Ultra」のデザインの流れを踏襲しているのがわかります。

Noteシリーズを廃止したといっても、売上が大きかった同シリーズではあるので、Galaxy S22 Ultraのような製品をサムスンは誕生させたんじゃないですかね。

石川氏:どのメーカーの動きを見ても、毎年スマートフォンを進化させていくのは難しいなと感じる。2022年のサムスンは、やや小ぶりな進化にとどまりましたね。

あと、10万円を超えるハイエンドスマートフォンの差別化が難しくなってきている。サムスンの場合は、折りたたみスマートフォンがGalaxyの〝最先端ブランド〟としてのイメージを作っている一方で、販売台数を稼ぐのは、エントリーからミッドレンジの「Galaxy A」シリーズ。これまでハイエンドの位置にいたスマートフォンの位置づけは、今後ますます各社難しくなっていくと思います。

例えば、ソニーの場合、「Xperia PRO-I」がある一方で、「Xperia 1 III」の立ち位置はややあいまい。Galaxy S22シリーズを見て、10万円を越えるハイエンドスマートフォンの存在意義に、曲がり角が来ている印象を受けました。

「Galaxy A」シリーズ

石野氏:近年はミッドレンジスマートフォンでも、優秀なカメラを搭載したモデルなども出てきているので、Galaxyに10万円以上払う価値を見いだすのが難しくなっています。特に、Galaxy S22、Galaxy S22+の2モデルは、目新しさにかけるというか、カメラスペックの一部が進化しているという話もありますが、微妙な進化でしかない印象です。

石川氏:中国のメーカーが明確にスペック争いをしかけているので、世界シェア1位のサムスンといえど、厳しさを感じますね。

石野氏:前モデルとなるGalaxy S21 5Gシリーズの売れ行きがあまりよくないんですよ。サムスンの第4四半期の売れ行きは、アップルに抜かれています。もちろん、アップルが同時期に新製品を発売したので、サムスンには想定内の事態だとは思いますが、それにしてもシェアの落ち込みは顕著。そんな中、大幅なリニューアルなく、マイナーチェンジのみの新製品投入でいいのかなという疑問があります。

だからこそ、Galaxy S22 Ultraは、人気の“Note”仕様を持ってきたのかなと思います。でも、どうせそれをやるなら、3モデル共通でSペンに対応して、Galaxy S22 Ultraだけ本体格納にしたら、他社のハイエンドスマートフォンに対して、もう少し差別化できたのになぁと思ってしまいますね。

ハイエンドスマートフォンのタッチペン対応は今後広まる?

房野氏:Galaxy S21 Ultra 5GでもSペンには対応していましたが、やっぱりSペンは本体に格納されていないと、なかなか使わないですよね。

法林氏:Sペンに対応し、本体に格納して……と少しずつだけれど毎年着実に進化しているので、とりあえずそこはよかったと思いますよ。

石川氏:ペン入力といえばGalaxyの得意な技術だし、ほかのメーカーはなかなかうまくいっていない部分ではあるので、サムスンには大切にしてほしいですよね。

石野氏:2022年に登場するであろう、次期「Galaxy Z Fold」は、Sペンが本体に格納されるという噂がありますね。

法林氏:Galaxy Z Foldのほうが筐体が大きいから、Sペンを格納するためのスペースは創り出しやすいよね。

2022年の注目スマホ「Galaxy S22」「Redmi Note 11」にみるハイエンドスマホの存在価値

房野氏:Galaxy S22 Ultraのものより握りやすい、大きめなサイズのSペンが付属するとうれしいですね。

法林氏:最近、家電量販店に行くと、PCコーナーが大盛況なんですよ。というのも、高校まではGIGAスクールで使えたけれど、学校によっては卒業時に手放したり、大学ではスペック不足と言うことで、進学時にPCを買い直す人が増えている。これに乗じて、例えば「Surface」は、背面にカメラが付いているので、黒板の写真を撮影してその上にメモできる……といったような使い方で、学生さんにアピールしています。タッチペン対応は、スマートフォンだけじゃなくて、PCの業界でも話題になりますし、ニーズもありますね。

石野氏:だからこそ、Galaxy S22シリーズではディスプレイが小さいモデルでも、Sペンに対応してほしかったですね。もしiPhoneがApple Pencilに対応したら、Galaxyも対応モデルを増やしていくんだろうなと思いますけど。

法林氏:今後、「Galaxy A50」シリーズなどで対応していくと面白いよね。

石野氏:確かに。タッチペンの操作にワコムの技術を使っていて、パネル側も対応しないといけないのでコストはかかりますが、Galaxy Aシリーズの中では上位のGalaxy A50シリーズなら、採用もありそうですね。

法林氏:あと、サムスン以外のスマートフォンメーカーって、実は、あまりタッチペンに対応できていないよね。

石川氏:書き味がいまいちだったり、あまりうまくいってないです。

法林氏:Surfaceのタッチペンも、もとはワコムの技術だしね。

石川氏:「Surface Duo 2」で使えるスリムペンは、PCのSurfaceと共用できるんですよ。マイクロソフトが本気で取り組んでいる証じゃないですかね。テレワークが浸透して紙での仕事が少なくなっている中で、デジタルデータにペンで直接文字を書きたい人は案外、多いと思います。

法林氏:タッチペン対応は、今後ほかのスマートフォンメーカーにも、広まっていってほしいよね。

石川氏:それでいうと、中国は漢字の文化なのに、中国メーカーでタッチペンの技術開発を積極的にやっているところがないんですよね。普通に文字入力したほうがやりやすいのかな。

石野氏:中国メーカーは、タッチペンといった付加機能よりも、コストパフォーマンスに全振りしている印象なのが少し残念ですね。

4モデル展開の「Redmi Note 11」シリーズにXiaomiの課題は見えたか?

房野氏:Xiaomiからは、スペックに違いのある「Redmi Note 11 Pro 5G」「Redmi Note 11 Pro」「Redmi Note 11S」「Redmi Note 11」が発表されましたね。

「Redmi Note 11 Pro 5G」

石川氏:正直、4モデルも発表されると全部覚えられない(笑)

房野氏:把握するのが難しいですよね。

石野氏:製品ラインアップを簡単に説明すると、Redmi Note 11 Pro 5Gが最上位モデル。でも、アウトカメラの数は1つ少なくなっています。あと、一番安価なモデルはRedmi Note 11です。こちらのみ、メインカメラが5000万画素で、残り3モデルは1億800万画素ですね。

Redmi Note 11 Proの搭載チップセットは「Snapdragon 695」で、実際はミドルレンジのスマートフォンです。それでいて、1億800万画素のカメラを搭載した。それにより、最上位モデルでも400ドルを切ったことは注目です。

石川氏:安い以外のおすすめポイントがあまりないんですよね。発表会を見ていても、価格が発表する段階になって、ようやく興味が出てくるような印象です。

石野氏:Xiaomiは特にその傾向がありますよね。驚きポイントが全体的に少ないです。

法林氏:値段以外の、「うちはこの機能が売りです」というセールスポイントが、各社少なくなっているよね。プラスアルファの要素が減ってきてしまっています。

石野氏:今回のRedmi Note 11シリーズも、すごいスペックではあるんですけど、1億画素のカメラや急速充電機能自体は目新しくない、デザインもあまり革新的ではないなと思っていたら、価格に驚かされるという、いつものXiaomiのパターンです。

房野氏:4モデルで展開される理由はあるのでしょうか。

法林氏:販売する国によって、採用端末を細かく分けるんだと思いますよ。

石野氏:あと、一番下のランクのRedmi Note 11は、179ドルと安かったり、5Gに対応するのは最上位モデルのRedmi Note 11 Pro 5Gだけだったりと、意外と性能差はあります。

法林氏:でも、2021年にauから登場した「Redmi Note 10 JE」は、発売から1年もたっていないのに、もう投げ売りされている。価格競争の厳しさだよね。

石野氏:せっかく「JE(ジャパンエディション)」にカスタマイズしたのに、残念ですよね。Xiaomiはもともと、ファンコミュニティがあって、カスタムROMなどを配布したりと、ユーザーのカスタマイズ文化を支えることで成長したのですが、日本に来てそういう文化的特徴は少なくなってしまいました。

法林氏:日本市場は通信キャリアと組むか安く売るかしか、スマートフォンを大量に販売する道がないから、難しいんだよね。

石川氏:通信キャリアの割引があまりできなくなった中、安い端末を探しているユーザーにXiaomiは好評を博しましたが、iPhoneの投げ売りなどの状況を見ると、元値が安いスマートフォンでなくても、なんとか買えるというイメージが定着しつつあります。

今後、Xiaomiに限らず各メーカーは、〝安いだけ〟の端末だけでメーカーの独自性を保つことは、ますます難しくなっていくのではないでしょうか。

……続く!

次回は、NVIDIAの売却について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。